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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
「おとっつぁんの気性だったら、絶対に荷車に轢かれそうになった子どもを見過ごしにするなんて、できなかったでしょう。父は父の信念を貫いて生命をまっとうしたのだと思うから―、誰も恨んでなんかいません」
「こうなってみて、私は初めてお絹さんが伊八さんを選んだ真の理由を知ったような気がする。お絹さんも伊八さんも良いお人だった。お前さんは、そんな両親を持っているだなんて、果報者だよ」
 その言葉は市兵衛の心からのものであることが判った。お彩は頷いた。
「はい、私もそう思います。私のおとっつぁんとおっかさんは誇りに思える人たちだったって」
 二人ともが短い一生の中で、自分なりの花を咲かせた人だった。伊八という父を、お絹という母を持ったことを、お彩は今、心から誇りに思える。
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