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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】  其の壱 
 お彩は市兵衛の眼を見ながら、ひと息に言った。
「私をあなたのお嫁さんにして下さい」
 言い終えてから、どっと冷や汗が出た。
 女の方から、しかも、ひと度は自分から別れを言い出した身でありながら、女房にして欲しいなぞとよく言えたものだと我ながら恥ずかしさに身も世もない心地だった。このことで市兵衛に嫌われるどころか軽蔑されたとて、当然だ。
 しかも京屋は江戸でも随一とも呼ばれるほどの大店であり、市兵衛は男ぶりも良く、年長の同業者からも凄腕と一目置かれるほどの大商人である。お彩が大店の内儀の座、もしくは京屋の金目当てに結婚を迫っている―、そう誤解される怖れもあった。
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