パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第25章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の壱

　この娘は危なっかしくてならないのだ。無類のお人好しで、世間ずれしていないというのか、眼を離すと、どこへいってしまうか判らない、そんな危うさがある。いつも誰かが傍にいて守ってやらねばならない。
　市兵衛の女房となった時、伊勢次はその役目は、これから先はお彩の良人たる市兵衛の役目だと思っていた。しかし、こんな状態のお彩を見ていれば、それが己れの大きな間違いであったことを、伊勢次を認めざるを得なかった。
　もう他のどんな男にも任せられない。お彩の身は他ならぬこの自分がずっと傍にいて、守ってやるのだ。まだ泣いているお彩の背に回した伊勢次の手に力がこもった。