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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】  其の弐 
 そこで、伊勢次がハッとした顔になった。
「いや、何か押しつけがましい言い方だったかな」
 照れたように笑うのへ、お彩は微笑んだ。
「ありがとう、伊勢次さん。何から何まで甘えっ放しで」
 だが、いつまでもこのまま居候を続けるというわけにもゆかないことを、お彩はよく心得ている。いくら、伊勢次の人が好いからといって、これではあんまりだ。
 お彩は近々もう一度、「花がすみ」を訪ねようと思っていた。とはいえ、今はまだ、悪阻(つわり)も烈しくて、三度の飯さえろくすっぽ喉を通らない有り様だから、働くどころではないだろう。産婆のおすみが出してくれた薬を日に三度煎じて呑んではいるのだが、吐き気は一向に軽くならない。
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