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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第4章 第二話【花影】-其の壱-
その時、お彩は思い切って、男に自分自身が長らく心に抱えてきた悶々とした胸の内をさらけ出した。実の父親に惚れているなぞと打ち明ければ、男に愛想を尽かされるのも覚悟の上だった。
だが、男の表情には何の変化もなく、それどころか静かな声音でお彩に言ったのだ。
―私が自分の娘に男として惚れられていると言われりゃあ、男冥利に尽きるよ。自分の娘に惚れられるなんざぁ、お前さんの父親(てておや)はよほどの良い男なんだろうねえ。
そのひと言は、お彩の苦衷を随分とやわらげた。自分の娘を嫌いになったり憎んだりする親なんぞこの世にいやしない。
その言葉がお彩を救った。が、お彩にとって重要な意味を持ったのは、むしろ、それらよりも男が別れ際に残した台詞だったのだ。
―私はお前さんのおっかさんを知っているよ。
だが、男の表情には何の変化もなく、それどころか静かな声音でお彩に言ったのだ。
―私が自分の娘に男として惚れられていると言われりゃあ、男冥利に尽きるよ。自分の娘に惚れられるなんざぁ、お前さんの父親(てておや)はよほどの良い男なんだろうねえ。
そのひと言は、お彩の苦衷を随分とやわらげた。自分の娘を嫌いになったり憎んだりする親なんぞこの世にいやしない。
その言葉がお彩を救った。が、お彩にとって重要な意味を持ったのは、むしろ、それらよりも男が別れ際に残した台詞だったのだ。
―私はお前さんのおっかさんを知っているよ。