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第27章 第十一話　【螢ヶ原】　　其の参　

　お絹を手込めにし、お彩を身ごもらせた張本人であり、その男のためにお絹は地獄の苦しみを見ることになった。
　そう思えば、憎んでも憎み切れない男ではあるが、その憎い男はまた、他ならぬお彩の血を分けた父親であった。たとえどれほどお彩が己れのさだめを呪おうとも、吉之助がお彩の父親であることは変わらない。変えられない。
　出生の秘密を知り懊悩していたお彩に、育ての父伊八が言ってくれた。
―お前のおとっつぁんは、おっかさんを刺客から身を挺して庇ったんだ。
　当時、母はお彩を宿しており、結果として吉之助はお絹とお彩の母子を危機から救ったことになる。吉之助はそのときの負傷が因(もと)で亡くなった。