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ブルジョアの愛人
第2章 秘密の花園

「シャワー、浴びて来るね」

背筋を伸ばしてソファに座る莉菜に声を掛け、浩晃はバスルームへと向かった。

莉菜は蚊の鳴くような声でうん、と返事をしながら、浩晃の大きな背中に熱い視線を送る。

脱衣所から、バスルームの扉が閉まる音がしたのを聞くと、莉菜は深い溜め息をついた。

せっかくお洒落をして来ても、浩晃は莉菜の服装について全く触れてくれない。莉菜の普段の服装を知らないからなのだろうか。

莉菜は学校に行く時は、もっと地味な格好なのだ。
セーターやジーンズなどシンプルでカジュアルな服がほとんどである。スカートやワンピースなど滅多に着ない。

小学五年生の割に背の高い莉菜は男子と同じぐらいの身長で、可愛いという柄ではないと自分で思っている。身長が高いのがコンプレックスなのだ。

クラスの可愛い子といえば、やはり樹里だ、と莉菜はいつも思う。

ひらひらしたピンクや白などのスカートを穿いて、長い髪をツインテールにして。莉菜にはとてもできない。

しかし、自分よりはるかに年上の浩晃の前でだけなら、と最近可愛らしい服を選んで着るようになったのだ。なのに浩晃は「可愛いね」のひと言も言ってくれない。父親の愛情に飢えた莉菜の欲求に、浩晃は気づいていないのだろう。
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