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ブルジョアの愛人
第12章 初夏の蕾

優々は、真緒がじっとこちらを見つめていることに気づき、慌ててタオルで身体を隠した。

「ごめんね、私そんなつもりじゃ…」

真緒が怒っているとでも思ったのだろう、優々は顔を真っ赤にして俯いた。

見ていたことがバレた。変態だと思われたはずだ、もしかしたら嫌われたかもしれない。羞恥と焦りで頬を紅潮させる優々を見て、真緒の胸の奥は誰かの手で掴まれたように疼いていた。

乱暴に、だが弱い力で胸をいたぶるその手にはマーマレードが塗られていて、真緒の気持ちをほろ苦く甘いもので満たしてゆく。息が荒くなるのが自分でも分かった。

「優々ちゃんも、綺麗だよ?」

小麦色の細腕が白い肩に触れた。優々が顔を上げると、真緒の顔はびっくりするほど近くにあった。

優々のくせっ毛は、真緒の吐息に踊っている。思春期の少女特有の甘くてどこか生臭い匂いを、二人は嗅いだ。

真緒の胸の奥を弄んでいた手は離れ、物足りなさに少し疼くと、今度は優々の濡れた眼差しがマーマレードを舐めとる。そして、マーマレードよりもっと甘くて切ない媚薬を塗り込んでゆくのだった。

翔太はその様子を、爬虫類のような目でじっと見つめていた。
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