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ブルジョアの愛人
第13章 梅雨冷えとカーディガン

しかし樹里には、ハブられる理由がいまいち分からないでいた。

クラスメイトの口から援助交際という言葉は未だに聞いていない。その話を持ち掛けた玲愛でさえ忘れているようである。代わりに、女子が大声で妙なことを言っては樹里を見て笑うのだ。

「自分の父親が小学生の女の子とエンコーしてたらどーするー?」

「そんな親父サイテーだわー、キショ過ぎだしー」

「あー分かる。それな」

「しかも買った女の子が自分の娘のクラスメイトだったらもっとキモくね?」

「うわ、ロリコンとかマジあり得ねえし、ないわー」

愛海、玲愛、由加里、沙良。彼女たちはこの一週間の間、一体何をしていたのだろうか。莉菜や莉菜の祖父母、優々、真緒がこれを見たらどう思うだろうか。教師の前でだけ改心したいい子でいるから尚更たちが悪い。

そして、これらはまるで樹里の父が樹里のクラスメイトを買春しているかのような言い種である。それが真実であれば犯罪だということは、樹里も知っていた。

樹里はそんな嫌がらせをされる度、援助交際がバレていない安心感より自分が知らぬ父親の犯罪疑惑に意識が遠のくのだった。
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