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ブルジョアの愛人
第19章 絆創膏をくれた人

あからさまな悪口はぴたりと止んだ。以前は、無視される方がずっとマシだと思っていたはずなのだが、クラスメイトが何を考えているのか全く分からないというのも気持ちが悪い。

樹里が今朝教室へ入ったとき、誰かは分からないが、女子が悲鳴を上げた。もはや樹里は化け物扱いだ。

だがクラスメイトは、樹里本人が犯した罪を知らない。普通通り接しようとしてくれたのは大塚だけだ。

昼休み、こっそり大塚に呼び出された。それもそうだろう。人を殺したと言い残した翌日に父親が逮捕されたのだ。樹里の精神状態が不安定どころではないことは疲れきった表情から分かる。

だが二人で音楽室へ向かう途中、3組の担任である小宮山に止められた。

噂が飛び交う中で呼び出したとなれば、また樹里があることないこと言われるだろう、とのことだった。

実際、樹里もこれ以上話せそうな状態ではなかった。朝から麻里子に叩き起こされ、見知らぬ男に一通り事情を説明された後で学校を休むよう言われた。だが樹里は首を縦に振らなかった。

家にいたら、飯尾のことを訊かれそうで怖かったのだ。
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