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ブルジョアの愛人
第21章 友達のままで

それでも廊下や授業で逢ったときは必ず声を掛けてくれる。ひとことやふたことでも。

そして、長い長い夏休みには優々の家でまたお泊まりをした。もう悪戯にキスなどはしなかったが、お風呂のときはついつい目を奪われた。

そして恋バナも。

「優々の好きな人って変わらないの?」

布団に入るや否や真緒は目を輝かせて訊いた。

「うん…まだ変わらない」

「へえー、純情だねえ」

まるでオヤジのように間延びした口調には思わず笑ったが、優々の顔は真っ赤だった。

「その子って、また同じクラス?」

「もう、それ言ったらバレちゃうじゃんかっ」

優々が枕で叩くふりをすると、真緒もクスクス笑いながら応戦してきた。

「…別のクラスになっちゃった」

優々がしんみり言うと、真緒も天井を睨んだ。暫く唸っていたが、やはり分からなかったようだ。

「ねえ、そろそろ教えてくれてもいいじゃん」

「まだダメだよ。両想いになったら教えてあげる」

「じゃあ祈ってるよ」

そこで優々の好きな人の話は終わった。真緒に好きな人はできたのか気になったが、訊く勇気はない。

すると真緒が自ら語りだした。

「私、まだ好きな人できないんだよねー」

「無理に作らなくていいと思うけど」

興味のないふりを装ったが、内心ガッツポーズだった。

「やだっ。ときめきたいよー」

真緒がじたばた暴れる。可愛かった。優々の六年生の夏休みの思い出には、膨れる真緒の顔がくっきりと刻まれている。
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