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ブルジョアの愛人
第10章 破滅の理由

朝から絶対に何かおかしいとは思っていた。

教室に入ると、ひそひそと話す声がぴたりと止み、挨拶をしても誰ひとり返事をしない。しかし樹里が席につくと、また内緒話を始めた。

「ねえ、昨日の宿題で分かんないとこあってさ、見せてくれないかな?」

いつもなら「宿題貸せや」と言うところを、村八分にされていることを感じたらしい樹里は窓際のグループに媚びてみた。するとかつて下っ端にもしてもらえなかったそのグループは、口元に薄笑いを浮かべて「トイレ行こ」と去って行った。

何、それ。

樹里は凍りついたようにその場から動けなかった。教室を出ていったグループは、廊下でけたたましい笑い声を上げている。教室に残っている児童も、皆樹里を見てクスクス笑っていた。

他のグループに話しかけようとも思ったが、やめた。きっとまた避けられるだけだ。頭から冷水をかけられたような感覚にとらわれる反面、顔は羞恥と屈辱で燃えるように熱い。

これじゃ、莉菜みたいじゃん。心の中でひとりごちて、ふと気づいた。莉菜、いやもしかしたら真緒が何か企んだのでは――
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