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先生と私
第6章 初めてのクリスマス・イブ
先生は言葉通り、週に1-2度程電話を掛けてきた。クラッシックのコンサートや、映画、食事。私の生活は彩を増してとても充実しているように思えた。

先生の事務所は年末の休みに入った。

てっきり熱海へと行っているものだとばかり思っていた。クリスマス2日前にイブに会えないかと先生から電話が掛かって来た。

9時過ぎまでバイトが入っていると伝えると、では僕がお店に迎えに行きましょうと先生は言った。

「ほんの少し…期待して良いのでしょうか?」

勇気を持って聞いたのに、先生は笑っているだけだった。

今日は雰囲気の良いホテルのレストランだ。以前マネージャーにお願いして何度か弾かせてもらっていたので、客層も見当がついた。そのレストランに瑛二が彼女を連れて行くと言うので、無理に短時間ピアノを弾かせて貰えるようにお願いした。

…彼女ってどんな人だろう。

「お前と違ってめちゃめちゃ可愛いから嫉妬すんなよ。」

瑛二が言うほどだから、凄い美人には間違いない。ほのかから、既に友人の数人と食事へ行ったり、デートを重ねていると聞いた。

…もしかして二股?…ちゃらい瑛二君なら納得。

誰が本命で、誰が遊びなのか…私にはそんなことどうだって良い。

レストランにステージは無い。ピアノが客席から区切られ、客から見えるようになっていた。客と同じ視線の高さでピアノを演奏するのは、分かっていても緊張する。

閉店に近かったが客は瑛二を含めテーブルの半数程残っていた。チャイコフスキーのくるみ割り人形から数曲、そして瑛二のお母さんの曲。

短いけれど寂しさを携え、心に残るメロディーだ。これは私から瑛二へのクリスマスプレゼントだった。

ゆっくり席を立ち礼をして、去った。パラパラと拍手が聞こえた。

裏に戻り、先生とのデート用の服に着替えた。支配人が茶封筒をくれた。
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