小説は、すべて“動き”に関係します。
その“動き”の面白さを読者に味わってもらうのです。
小説を表現する形式として『描写』『説明』『台詞』があると言いました。
それらは道具と言ってもいいでしょう。
でも、道具の意味を知ることは必要ですが、小説を書く上ではあまりその“区別”は必要ないと私は考えます。
実は『台詞』の中で『描写』もできます。
「君、大きな目だね」
これ、台詞で相手の目を描写しています。
『台詞』の中で『説明』もできます。
「この壺はね、二百年前に作られたものなんだ」
これ、台詞中で、知覚では分からないことを『説明』しています。
また『描写』の中に『説明』が含まれる場合もあります。
『この二百年前に作られたという壺は、朝日を受けて輝いていた』
一文に描写と説明が入り混じっています。
これでは形式上の区別すら危うくなってきました。
私は小説を成すという、これらの分類の仕方を捨てることにしました。
私は“動き”を中心に小説を考えてみました。
動きを軸として、小説の文章が、どんな“役目”を持って書かれているかを探ろうと思います。
タケシは殴った。
マモルはそれを避けた。
タケシはもう一度振りかぶった。
その前にマモルが殴った。
これ、動きの描写だけです。
読めなくはないですが、この調子で小説がすべて書かれたなら、稚拙な感じを受けます。
ここに『説明』を加えます。
タケシは拳を握り、マモルの顔めがけて突き出した。
渾身の力でだ。
しかし、マモルはそれを寸前で避けた。
タケシはもう一度マモルを殴ろうと拳を振り上げた。
その時だった。
先にマモルが殴ってきた。
少し描写に手を加えましたが『渾身の力でだ』というのは『説明』です。
見た目ではわからない情報です。
どうでしょう?
なにか、動作に深みというか厚みが出てきたと思います。
もちろん『渾身の力で』といのを『タケシは拳を握り、渾身の力でマモルの顔めがけて……』とも書けます。
これは、作者の好みになります。
でも『説明』を加えることで、描写がレベルアップします。
あともう一つ、あるものを加えるともっと小説らしくなります。
つづく……。
作者ページ
蒼井シリウスさんの日記
シリウスの小説執筆方法論 第3回
[作成日] 2014-04-25 09:45:29