シナリオ風ショートストーリー
『短冊の願い』
人物
田中健太(5)幼稚園児
田中紀夫(30)健太の父
田中祐子(28)健太の母
遠藤望美(25)健太の幼稚園の担任
西村修司(45)祐子の主治医
○田中家・リビング(夜)
紀夫と祐子が激しい言い争いをしている。
夫婦喧嘩のよう。
ソファの陰に縮こまり、耳をふさいでいる健太。
○幼稚園・教室内
部屋の隅に笹の葉をたくさんつけた一本の竹が備え付けられている。
その隣で、短冊を手にし、子供たちに説明をする望美。
望美「はい、これは短冊と言います。七夕の日に、これに願い事を書いて竹の枝に下げると、願い事が叶うと言われています。あ、願い事はひとつだけにしてくださいね」
短冊を前に考え込む健太。
一瞬目を見開き、思いついたように一心不乱に短冊に書き込む。
○病室内
ベッドに上半身を起こしている祐子。
その傍らにリンゴの皮を向いている紀夫。
むき終わったリンゴを祐子の口元に持っていく。
弱々しく口を開き、ゆっくりと食べる祐子。
紀夫「うまいか? 祐子」
祐子は微笑んで無言でうなづく。
紀夫も微笑む。
紀夫のそばに健太。
二人を見て嬉しそうに顔をほころばす。
○西村医師の受診室内
西村に向かい、沈痛な面もちの紀夫。
壁のボードにレントゲン写真。
西村が言いにくそうに口を開く。
西村「田中さん、残念ですが……もって三ヶ月かと……」
うなだれる紀夫。
○幼稚園・教室内
嬉しそうな顔で、望美に駆け寄る健太。
健太「望美先生! すごいんだよ! 僕がね、短冊に書いた願い事かなったんだよ!」
得意げに話す健太。
望美「良かったねー、健太君」
微笑んで、その頭をなでる望美。
部屋の隅にある竹の枝に下がった短冊が風に揺れる。
短冊に書かれた文字。
「パパとママが なかよく なりますように」
完
作者ページ
蒼井シリウスさんの日記
ベリーショートショート その7
[作成日] 2014-07-07 08:24:26
日記へのコメント
いつものギャグ系だと思って気を抜いて読むと、突然、黒い落とし穴が待っています(笑)
最近“シナリオ”なるものを勉強し出したシリウスです。
今後の小説書きに活かせたらと思います。
最近“シナリオ”なるものを勉強し出したシリウスです。
今後の小説書きに活かせたらと思います。
黒い…黒すぎる(涙)
さすがシリウス様
人間って悲しい生き物…
さすがシリウス様
人間って悲しい生き物…