『Xデー』は早いうちに読者に提示しよう! というお話。
先日、落語を観る機会がありました。
ある業界の、三百人ぐらい集まった研修会の最後に、記念講演として、笑福亭○○という若手の落語家を招いていたのです。
多分、私の人生で初の生(なま)落語です。
二つの演題が披露されました。
一つ目は、古典中の古典『ときそば』です。
ただ上方落語なので『ときうどん』になっていましたが(笑)
ずる賢い男が、屋台でうどんを食べ、勘定のときに、一文、ニ文、三文……と、うどん屋のおやじと一緒に金を数えて「今なんどきだ?」と訊いて、勘定をごまかすアレです。
やっぱり、プロですから、うどんを食うときのジェスチャーや音の出し方がリアルに見え、夕方でしたので、お腹がグーっと鳴りそうになりました(笑)
二つ目は、題名を聞きそびれましたが、年の暮れに、長屋に住む貧乏な夫婦が、ご近所に見栄を張るために“餅つき屋”を家に呼んだように見せかける芝居をうつ話です。
これは初めて観ました。
亭主が声と音だけで一人で何役もこなし、さも大勢の餅つき屋が家を訪れているように見せかけるのです。
そしてクライマックスは、餅つきの音を何を使って出すかです。
実はそれは、女房の裸の尻を叩いて出すという設定なのです(笑)
着物の裾をまくり、尻を突きだす女房の姿と、その尻を叩いて音を出す亭主を、落語家が巧みに演じ分けます。
実際は、手の叩き方を変え、音を変え、合いの手をはさみながら、うすで餅をついている音をリアルに再現しているのですが。
いやあ、面白かったでした。
プロの芸というものは観ていて安心できます。
それに古典というのは、すでに完成された話だと思います。
どうやれば、観客が面白いと思うのか、計算され尽くしているに違いありません。
私はその帰り道、車の中で、あの話の「何が面白くて、何が観ている者を惹き付けるのか?」を、ずっと考えていました。
それで、ふと気づいたのです。
あの二つの演題には、ある“共通点”があることを……。
つづく……。
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蒼井シリウスさんの日記
シリウスの小説執筆方法論 第8回
[作成日] 2014-12-09 08:08:19