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先週末、８本所有しているギターの内４本を楽器屋さんに買取ってもらいました。
ウィンドウに飾られた中古のギターに目が留まりました。

ギブソンという老舗メーカーの古いモデルで、Ｌ1というギターです。

表面がガサガサに剥げて、見た目ボロなのですが、『弾いてみる？』と店長に言われ『うん。』と答えた私。

手渡されたＬ1をポロロンと爪弾くと、なんか木魚のようなポコポコした音が出ます。
こんな感じかぁと思いつつ、しばらく弾かせてもらううちに、ポコポコがプンプンに変わってきます。
ほぅ、と思いながら弾いていると、風邪気味の人の声に近いというか、しゃがれた感じのなんとも言えない枯れた音色を響かせます。弾くほどに味わい深い・・・。

店長『どう？』

私　『欲しい。』

店長『な、だろ。』

値段は、ン十万としか言えませんが、興味の無い人が聞けば呆れるような額です。
買取ってもらった4本合わせても半分にもなりません。

でも買いました。
実は私には秘密のヘソクリがありました。
全く金利のつかない、なけなしのヘソクリ定期を二年前に解約し、自動車会社の株を少々買い、先日、ほんの少し、その配当金を得たところだったのです。

ですが、その帰り道、駅前でどこかの候補者が演説していたのが頭にきました。
『何もせず、株を持っている人だけが得をするアベノミクス!』とマイクを通して訴えていました。

私は何もせずに利益を出したのではありません。

預金を減らすかもしれないという、リスクをとった上で資金を運用したのです。
それに大金がなくとも、株式は誰にでも簡単に買えます。外貨預金も同じです。
その上、政府・日銀は２％を目標にインフレにすると記者会見までしました。
要するに、お金を沢山刷って、価値を２％毀損すると公言したのです。
資産としてお金を持っている方が損をするということです。

先の候補者の演説は、私への言い掛かり以外の何物でもありません。
腹が立ちましたが、私は一目惚れしたL１を手に家路につきました。
帰宅した私に妻は言います。

『あら、買取って貰えなかったの？』

『いや、中古のいいのがあったから買ったんだ。』

『なぁにそれ、ボロねぇ。』

『あ、うん、これ1万5千円。』

『そんなボロ、1万5千円もするの?!』

と、妻は呆れていました。
あの楽器屋へは二度と夫婦で行けません。