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蒼井シリウスさんの日記

足の小指
[作成日] 2015-08-08 15:59:40
私は月に何度か温泉施設の中に併用されているサウナ室を利用する。
サウナに入ると、何もすることがない。
自然とうつむいて、足を見つめてしまう。
足の指を動かしてみた。
動かして気づく。
一本一本動かしていくと、どうしても小指だけが単独で動かない。
昔何かで聞いたことを思い出した。
この先、人間の体の中で退化していくものは足の小指だと。

太古の昔、人類の祖先は木の上で生活していたのだろう。
そのために、足の指一本一本の動きが必要だった。
しかし、今は歩くのが主、増して靴の中で指を動かすことなどない。
そのまた端の小指などは、たまに、家の中に箪笥があったことを確かめる為以外は必要とされなくなった。
こんな衝撃的な話もある。
人間の足の小指の関節は本来三つあるのに、今は二つの人の割合が多くなっていると。
あなたの小指の関節は、いくつあるか数えてみるといい。
使われなくなったものは、その機能が衰え、いつしか要らないものとして退化してくのは避けられないだろう。
私は、その日は必死に小指を動かす練習をした。

次の日だった。
知り合いに、赤ちゃんが生まれ、初お目見えの場に立ち会う機会があった。
生後一か月の女の子だ。
小さな手足を盛んに動かしていた。
その子は裸足だった。
ふと、足の指に目が行った。
私は思わず声を上げてしまった。
「指が動いてる!」
その場にいた友人は「失礼なこというな! 指が動くのは当たり前だろ」
と、とがめた。
「いや、足の小指だよ!」
私が指さした彼女の足の指は、小さいながらも、それぞれ、横に大きく開き、一本一本が独立して動いていたのだ。
その友人に言い返した。
「お前、足の小指動くか?」
「い、いや……」
「そうか……最初から動かないわけじゃないんだ……」
私はすべてがわかった探偵のように顎に手を当て、一人物思いに耽った。

始めから動かないのではないのだ。
人間として生活していく過程で動かなくなるのだ。
なんて、もったいないことを私たちはしているのだろうか……?
使える能力をわざと封じ込めてしまっていたのだ。
私たちは成長し、使える能力を増やしていくが、その反面、どれくらい始めから備わってきた能力を失ったのだろう……?
私は彼女の足の指に触れたい衝動を押さえながら、その小さくて力強い動きを、いつまでも見つめていた。


日記へのコメント

ちなみに日本人は欧米人に比べて関節が一個少ない割合が多く、約八割の人が二つしかありません。
日本人の方が早く木から降りたのでしょうか?
それとも親にしがみつく必要がなく、早く自立する種族なのでしょうか?

ふと小さい頃、未来少年コナンのまねをして、よく足の指で物をつかむ練習をしたのを思い出しました。

ちなみに、私は作家さんたちの交流を否定するものではありません。交流から生まれる社交辞令のような作品への感想を否定します。
やはり作品を書かれている方の中には、本当に真摯に自分の作品の評価を知りたがってる人がいます。その人たちに失望感を与えることは避けたいのです。
[投稿者]蒼井シリウスさん [投稿日]2015-08-08 22:14:29

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