『クリスマス・プレゼント』
クリスマスを一週間後に控えた金曜日の夜だった。
イルミネーション輝く歩道を、あなたと歩いた。
行き交う人とぶつからないように、あなたの左腕にしがみついて。
束の間でも私には幸せな時間。
まだ私の体の中にあなたの余韻が残っている。
クリスマスの夜に逢えないことはわかってる。
逢えるとしたら多分、“イブイブ”の日だろう。
あなたには、ケーキを囲み、笑い合える家族が家で待っているのだから。
それでもいい、こうしてまたあなたと寄り添って歩けるなら。
あなたは、宝飾店のショーウィンドウの前で不意に立ち止った。
「ちょっと、見てみよう」
あなたが私に微笑みかけた。
私は黙って、こくりとうなずいた。
二人で店に入る。
私は物欲しそうな顔を見られるのが嫌で、あなたから離れた。
あなたは一人でネックレスのショーケースばかり見ている。
「これなんかどうかな? 君の意見も聞いてみたいんだ……」
あなたはケースの中を指さし、私を呼んだ。
私は、はやる心を押さえ、それを顔に出さないようにと、遠慮がちにケースを覗きこんだ。
「うちの娘も二十歳なんだ……これだと大人っぽいかな……?」
その時、私は初めてあなたの子供の歳を知った。
私は店から逃げ出したかった。
完
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蒼井シリウスさんの日記
ベリーショートショート その1
[作成日] 2014-01-09 13:42:55