『チャンプ』
私が小さい頃の話だ。
テレビでアメリカ映画の『チャンプ』を放映していた。
元チャンピオンで今は落ちぶれてしまったボクサーとその息子の話だ。
落ちぶれた父親だが、その幼い息子は父親をことを呼ぶときはいつも『チャンプ』と呼び、敬意を払っていた。
それを私の隣で観ていた80歳になる祖母が、感心したように言った。
「へぇ~、アメリカでも父親のことを『ちゃん』て呼ぶんだねぇ……」
(それは『子連れ狼』だけだ……ばあちゃん……)
完
ほぼ実話です。
(うぅ……歳が分かってしまう)
『白鳥』
私が高校生の時の話だ。
2月の晴れた日の夕暮だった。
父親と家の前の雪かきをしていた。
そのとき、遠くの空を何羽もの白鳥が鳴き声を上げ連なって飛んで行くのが見えた。
それを見て父親がぽつりとつぶやいた。
「白鳥の逃避行が始まったか……」
(それ、北帰行だろ?……オヤジ……)
完
ほぼ実話です。
(うぅ……生まれが分かってしまう)
作者ページ
蒼井シリウスさんの日記
小噺集 その1
[作成日] 2014-01-10 08:40:08