作者ページ

蒼井シリウスさんの日記

官能ベリーショートショート その32
[作成日] 2017-01-25 10:08:12
『帰り道』

暖炉の前。
彼と寄り添い、素肌に同じ一枚の毛布をまとい、炎を見つめていた。
ラジオからは、数十年振りに襲った寒波の状況が繰り返し聞こえてくる。
でも、太い丸太のできた壁は、完全に外界の気配を遮断し、今感じられるのは暖炉と彼の温もりだけだった。
都心からほど遠い山中に十五戸ほど建つ高級貸しコテージ村に、私たちはお互いの家族に偽りのスケジュールを告げ、たどり着いた。
彼の肩にもたれかかりながら、雪が張り付いた窓に視線を向ける。
「帰るとき、大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ。僕の車は四駆だし、雪用のタイヤも履いているから、どんな雪道だって心配ないよ」
彼が私を見つめる。
「君と二人でこんな家で暮らしていけたらいいのにな」
「何言ってるのよ、そんなこと……無理よ……わかってるでしょ」
若くない二人。
それぞれの家族があり、それぞれの生活がある。
それを捨てて二人で暮らす覚悟は私にはなかった。
多分、それは彼も同じ。
ひとときだけの逢瀬、それだけで満足なはず。
でも、彼の体温を肌に感じていると、この時間がいつまでも続けばいいと思うのも確かだった。
近づく唇。
毛布がお互いの肩から落ちる。
暖炉の熱が直に横から当たる。
毛布の上に横たわった。
彼の身体が自然に私の脚の間に収まる。
彼のものは二度目だというのに、既に硬さを取り戻していた。
嬉しかった。
腰を少し動かしただけで、もう私の入り口を見つける。
ゆっくりと私の奥まで入り、舌を絡ませると同時に彼が動き出す。
私は目を閉じ彼の背中に腕を回した。
二人で夕食を作り、笑いながら今日一日の出来事を語らい、そして夜は、彼の体温を肌に、中に感じながら愛を確かめ合い、寄り添って眠る。
そんな毎日が……。
望むべくもない未来だとわかっている。
今の家族、今の生活なくしては成り立たない自分。
でも、せめて今だけは……自分の思うままに……。
彼がせっぱ詰まった声で私の名を呼ぶ。
かまわない……未来がなくても……今、この時があれば……。
彼を促す。
私の中で彼の力強い脈動が始まった。
ああ……今だけ……明日になれば、また平凡な日常に帰るのだから。
同じ道を辿って……。
不意にラジオから違う声が聞こえた。
「ただ今、○○市の山中において雪崩が発生し、国道○号線が不通になり、この影響でその先にある貸しコテージ十数棟が孤立……」

日記へのコメント

まだコメントはありません

ユーザーメニュー

無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ