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『新しいブーツ』

女房と大喧嘩した。
俺に黙って新しいブーツを買ってきたからだ。
「だって、見てたら欲しくなったんだもの」
「なんだと！　この不況の中、俺なんかもう何年も新しい靴など買ったことないんだぞ！　少しは家計のことも考えろ！　今度、俺に黙って何か買ってきたら、捨ててやるからな！」
俺は女房にそう宣言した。
「ふん、なによ、私は私の好きなようにするわ！」
次の日帰ってくると、玄関には昨日買ってきたブーツの横に、また新しいブーツが置いてあった。
俺は、カーッとなり、そのブーツを掴むと玄関の外に放り投げ、一言怒鳴ってやろうと、勢い良くリビングのドアを開けた。
「……やあ、いらっしゃい、お義母さん……」

完



『視線の先にあるもの』

雑誌に“彼の結婚願望を探る方法”として次の方法が載っていた。
それによると、人間は、過去のことを思い出すときは視線は右上に、見たことのないものを想像するときは視線は左上に向くらしい。
その習性を利用して、彼に１５の質問をし、男の深層心理を探るというものだった。
私は早速彼にやってみた。
「第一の質問、あなたに彼女がいるとして……」
彼の目線は左上を向いた。
（第一問で、アウトかよ……）

完




おまけに時事ネタを、ひとつ

『罪と罰』

取調室。
容疑者の男は言った。
「盗った金は返せばいいんだろう？　だから逮捕だけは許してくれよ」
捜査官はそれを聞くなり、男を殴り、服をはぎ取り、丸裸にすると、外に放り出した。
「一週間後に服を返すから、俺のやったことは許してくれ」

完