第2回 官能小説コンテスト 審査員総評

選考会のようす

■ 総評 審査委員長小林弘利先生

今回はどの作品にも「物語を語ろう」という意欲があり、全体にひとつの文学作品として完成度が高くなってきていると感じました。
ことに『海鳴り』はそのまま単館映画やテレビドラマに出来そうな、登場人物の心の動きにしっかりと焦点が当たった作品で見事でした。
官能、というのは性愛描写の巧みさもさることながら、やはり、性愛にのめり込む男女のハート、それをこそ語ろうとする気持ちが大事だと思います。また、直接的な描写ではなく、その場面の空気や光や香り、そういったものが人物の心にどんなふうに映ったか。そんなことも表現されてこその「官能小説」だろうと思います。
このコンテストは書籍化やマンガ化、あるいは映像化に耐えうる作品の発見、という思惑もあるコンテストですのでなおさらに、人物の心の動きにこそ寄り添う。そういう作品が求められていると思います。

それでは今回のノミネート作品についての短評をさせていただきます。

海鳴り

このまま普通の小説としてもよく書けていると思います。
強く優しく悲しい、そんな男性キャラ無理なく感情移入が出来ました。
性愛ありき、の作品が多い中、人の心と心の結びつきに焦点が当たっているのも好感触でした。
ヒロインの理性と感情がせめぎ合う感じが狂おしく、そこにこそ「官能」が浮かび上がり、とても良かったです。
ラストなど映像的で美しいと思いました。

異常性愛

今回、もっとも性愛描写に力が込められている作品で、主人公が最終的にどんな「愛」を見出すのか。その興味で長大なページ数ながらぐいぐいと読ませる力がありました。けれど、終幕に彼が見出す幸福がとてもありきたりで、そこに最後まで読んできたからこそ得られる感慨、というものが受け取れませんでした。最後まで独占欲と自省の愛(利他とは自分を抑えることではない)から脱却することがなく残念だった、ということです。

~散花~

これも一般小説でも良さそうな、そして韓流ドラマになりそうな物語で好印象でした。性愛描写はあっさりと処理されていて、ヒロインの心の動きにこそ焦点が合っている物語はとても読みやすかった。
読みやすい、というのはつまりは読者の想定の範囲内で都合よく物語が展開する、ということでもありますが、ヒロインの指導者であるもうひとりのヒロインの扱いが雑だったのが残念。

愛すバー

愛されることよりも愛すること、というテーマは良いが、それがうまく伝わってきたか、と言うと、惜しい、という印象です。
老人ホームという場の設定とそこに暮らす老女の過去語り、という構成は素晴らしいですが、その老女の物語がそれを聞く若い女性の人生にどんな変化をもたらし、どんな成長を促していくのか、それも同時にしっかりと書き込まれていたなら、と思いました。
老女の語る物語が基本はどんな男に愛されてきたか、というエピソードに終始し、その男達もバラエティーに富んでいるので、愛され方のコラージュのようで、そういう男性遍歴の中で彼女が見つけた人生の真実、というものが読むものの心に響いて欲しかった。

誘淫接続

何より短いのがいい。
やはり携帯小説は短いものよりも長いもののほうが好まれるようですが、無駄に「終わらせないことが目的」という感じの長大な作品よりも一瞬の閃光のような短いものの方が僕は好きです。読みやすいですし。
そして内容もノミネート作品中、最も狂気に彩られていてスリリングでした。とくに新宿駅での狂気炸裂は映像で観たいシーンの一つです。ここで物語が終わっていた方が、もっと読者のハートに突き刺さる作品になったことでしょう。
ラスボスは最後まで謎のままだった方が、見えない電波に人々が洗脳され操られている現代社会の風刺となったのに、とそう思いました。

その、透明な鎖を

今回のノミネート作品の中で僕がいちばんお気に入りだったのが『海鳴り』とこの作品でした。ラノベ文体で、性愛描写も淡白ながら、体のつながりではなく心のつながりを求めて苦しむ若い恋人たちの姿は好きだったのです。
狂おしい思い、というのはモラルとインモラルのせめぎあいのなかから生まれるけど、この作品はその部分を丁寧に見つめようとしているように思いました。

秘密

とりたてて目新しさのないロマンポルノといった感じでしょうか。よろめき妻もの。
不倫ストーリーを真面目に紡いではいますが、心理描写も性愛描写も新味がなく、物語の展開にも意外性がありませんでした。

隠匿の令嬢

ストーリーは王道少女マンガのようで面白かったですし、ヒロインも魅力的ではありましたが、官能描写は、同じことの繰り返し、という印象でした。魅力的な登場人物が出てくるのに、その動かし方や出し入れに工夫がなく、その人物たちの内面にもっと切り込む意欲が欲しかったです。

顧みすれば~真の愛~

安易な、こういうの素敵でしょ? という夢物語だけど、アラブの王子とか、そういう子供っぽさが官能という大人っぽさと相容れないまま終わってしまった印象です。導入の会社員としてのヒロインは魅力的でしたので、そこからトンデモな展開になっていくのなら、その「物語の転調」をもっと大胆に展開させて欲しかったです。

『間違い』電話

ミステリーなのかサスペンスなのか、そういったもののパロディーなのか判然としない、つまりは拙さばかりが目立ちました。
性愛描写も工夫がなく同じことの繰り返しのようです。
何よりキャラクターが薄く、心の闇にも狂気にも踏み込めていない印象でした。


・・・官能を描く際には生殖器をどう刺激するのか、ということではなく例えば熟れた果物を口に含み、果汁が喉元へ滴って行く、そんなことを描写するだけで読むものをゾクゾクさせるような、そういう表現を探してみるといい。そう思います。そんな作品を目指すことで、さらに物語が深まっていくはずだから。

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■ 総評 久保直樹先生

第二回官能小説コンテスト受賞者、ノミネートされた方、本当におめでとうございます!
今回は前回の審査会議の紛糾が嘘のごとく意外とすんなり決まりました。
特に、大賞の「海鳴り」ほぼ満場一致で決まってしまいました。
小説に関しては門外漢の私ではありますが、「海鳴り」は文学作品としてもかなり高いレベルにあるのではないでしょうか。
映画化するのならば間違いなくこの作品を選びます。

前回、初めて官能小説というジャンルを真剣に読ませさていただいたわけですが、その時は、もっといわゆる「ゲスい」内容の作品群を想像しておりました。そして、その勝手な先入観は、完全に打ち砕かれたわけです。この第二回ではさらに、洗練されて品格のある作品と出会ってしまいました。「海鳴り」「その透明な鎖を」です。

前回今回と「官能」とは?という議論が審査員の間で巻き起こるのですが、これはこのコンテストが続く限り付いて回る宿命的な問いかけだと思います。

官能を単に即ぶつ的なエロと捉えるならば、間違いなく特別審査員賞の「異常性愛」になると思います。即ブツ的なというのは、「視覚的」に想像しやすい、AV的ともいえます。
女性は視覚でエロを感じないといいますし、男性は圧倒的に視覚でエロを感じるといいます。
「異常性愛」は現在流行りのAVジャンルを網羅しています。例えば「NTR」=「寝取られ」ですね。また、「唾液」を求める描写、「トイレ」という排泄のための密室空間での自慰やSEXの描写、これらで、まず私が連想してしまったのが、私が一番エロいAVを撮ると勝手に崇拝しております超大ベテランのヘンリー塚本監督の作風でした。
もしかしてマーチンさんはヘンリーさんのファンでしょうか?ご存知ないならば是非一度ご覧ください。本当はDEEPS作品(私のAVメーカー)を押すべきですが…。

「海鳴り」と「異常性愛」この二本のどちらを取るかは、まさに、当官能小説コンテストのイデオロギー闘争だと思います。

さて、私、実は「愛すバー」を一番にしておりました。
ストーリー自体は戦後の「パン助」と揶揄されていた、米兵相手の売春婦の話で既視感はありました。
しかし、このストーリーが素晴しいのは「養老介護施設」という舞台設定でだと思います。
まさに、「生」と「死」が隣り合わせ、「エロス」と「タナトス」を表現するのにこの手があったかと脱帽いたしました。かと言って人生の終焉を迎えんとする主人公には悲壮感はなく、死どころか強い生命力を感じました。女って逞しい!
しわくちゃなお婆ちゃん(お爺ちゃんも)だって、当たり前だけどエロかった季節もあったんだと。なんだか主人公が愛おしくなりました。

「~散花~」これはもう、皆様にもいえることですが長大なストーリーを書ききったということだけで、その集中力と地力が伺えます。
長ければいいのかということではありませんが、小説とは文字ですから、誰でも書けると勘違いしがちなんです。誰でも一本くらいは小説のネタは持っているといわれます。自分の人生の足跡でもいいですが、さあ、書くぞとなると、なかなか書けないものです。
書けることそのものが才能であると私は思っております。
しかも、おそらく古代中国の王宮が舞台だと思いますが、筆者には当然無い体験なのです。
完全に想像力だけで作り上げる。もちろん参考文献はあるでしょう。それでも、自分の見聞きしたものを超えるものを創ることはクリエーターの矜持ではないでしょうか。
「隠匿の令嬢」にも言えることです。

官能小説の女性の間では中東のワイルドな王子に見初められるというお姫様ストーリーがあると前回知りました。これに異を唱えるがごとき中国王朝もの。私は漫画「キングダム」が大好きですのでキングダムの始皇帝の若かりし頃のイメージで読んでしまいましたから、長さは気にならなかったです。

どうしても、映画化したらとか、AVにしたらとか、アニメならと視覚化することを前提に読んでしまうのは職業的なものなので、お許しください。
そんな私ですが、ある文章に思わず涙しそうになったのが「その、透明な鎖を」の一節でした。ネタばれになるかもしれないので詳しく書けませんが…。
「その、透明な鎖を」という今回ベストタイトルの意味がそこに集約されておりました。

タイトルはみなさん、映像の世界では中身より重要(そんなわけないですが)と言われております。
どんなに良い作品でもタイトルが悪ければお客さんに手にとってもらえないかもしれないくらい重要です。外国映画輸入会社はそこが最大の知恵を絞る場面ともいえます。
で、「異常性愛」「秘密」「『間違い』電話」は少し損しているかもしれません。

「その、透明な鎖を」に戻ります。
下記のフレーズがどこででてくるかは読者のみなさんじっくり読んで探してみてください。

「ん、どんな季節になるか…」
「さあ…でもきっと変わらないよ」

これは北野武監督の「キッズ・リターン」ですよ!
意味わからないですかね?あまり詳しく解説するのも無粋ですので。
私が思うに雪緖さんはこれが言いたくて書いたのではないかと、まったく見当違いでしたらすみません。

「顧みすれば~真の愛~」「誘引接続」「秘密」「『間違い』電話」
これらもたいへん面白かったです。
しかも「誘引接続」は優秀賞なのですから素晴らしいに決まっています。私もこういうサスペンスをタイトにまとめる力量が欲しいです。
それと、まさかの正体でした!

近い将来、すでに?
ここから大作家が現れるのは間違いないと思います。
そろそろ、コンテンツ会社もここを無視できなくなるのではないかと思います。

投稿されている作家先生方すべてに心から敬意を表します。

みなさまの書かずにはいられない溢れる思いがビッシ!ビッシ!伝わってきました。
そしてそのエネルギーはどこから吹き出してくるのでしょうか?
羨ましい!心の底から羨ましいです。
プロでも、いや他人にすり替えて格好つけようとしてしまいました。私自身です。
出発はシナリオライターなんです私。いまや、オリジナル脚本なんか枯渇して出てきやしません!
キーボードに向かい文字を打ち込み続けられるこれは、何度もいいますが才能です。
継続していれば必ず化けると思います。

そんな上から目線は無視してください。審査員なのでなんか教訓的なことを入れてしめくくろうなんてしてしまいました。

素直に楽しく切なく、エロい小説を楽しみました。
ありがとうございました。

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■ 総評 真咲南朋先生

みなさん、お疲れ様でした。今年のコンテストも良い作品が多くて審査員たちも選定に困っていました。
今年のノミネート作品の特徴としては前回よりもラブコメディ系のポップなものが少なかったかな、と。あとはページ数がめちゃくちゃ多い大作が増えたな、と思いました。
私は他の審査員の方のような解説ができないので今回も選定基準は「オナニーできるか&AVとしてどうか」の2点で考えさせてもらいました。

私が一番盛り上がったのは『異常性愛』かな。もう単純に、出てくる女たちがそれぞれ良い女でヌケる!ってことですね。官能小説としてエロ満載でイメージを膨らませて一気に読みました。最後の終わり方は賛否両論あるけど、私は良かったかな・・・・。
流行の寝取られ(NTR)、寝取らせがキーワードになっていて、NTR好きの私としてもワクワクしていました。やっぱり「嫉妬」は最高の媚薬です。

そして『海鳴り』。最初から最後まで風景が浮かぶような作品。『異常性愛』がAVならこちらは完璧に映画です。文体も非常に読みやすく、わかりやすい。官能部分描写も恥じらいやとまどいがじっくりと表現されていて美しかった。
とてもじんわりあたたかくなるような作品で映画化希望です。

あと個人的には『誘淫接続』がお気に入りでした。文章力あって設定も良くてすぐに引き込まれました。電波調教ということに非常に萌えました。
レズ要素もあり、「おお!!」と唸ったのですが最後のエンディングがもう一歩だったのかな・・・。
でもAVとしては非常に参考になりましたし、作者の方にはもっともっとSMやレズの勉強をして次回もっとエグいの書いてほしいです。

「愛すバー」は一番最初に読みました。タイトルにひかれたし、出だしも新しくてスラスラと読んでいけました。「散花」の世界観は是非、アニメか漫画で見たいです。大作なのできっとファン人気がすごかったのかなと。審査員の中でも女子からの人気が高かったですね。
他のノミネート作品としては『隠匿の令嬢』『顧みすれば~真の愛』、私は好きでした。
ファンタジーがすきなのもあるけどやっぱりイケメンで御曹司、美しい青年・・・そういうの好きですもん、女の子って。女子向けAVがはやっているこの時代なのでもっともっと女子が萌える作品があってもよいと素直に思いました。普段の生活では決して起こることがない夢の世界、切なかったり幸せだったりジェットコースターのようにくるくる状況がかわり、読み手をソワソワさせていく大胆な展開、こういうのにハマる人たちは多いと思います。

今回のコンテストで思ったのは作品内容はみなさん素晴らしいのですが、エロの部分がまだ浅いかな、と思いました。官能部分のプレイやシチュエーションに目新しいものがなかったです。もっと突拍子もない、想像もつかないものを描いている作品があってもよいのかな、と思いました。SMを題材にするならもっともっとSMを知ってみてほしい。知れば知るほど文章を書く意欲が湧くと思います。
もっと深く突っ込んだ作品が出てくるのを楽しみにしています。

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■ 総評 神田つばき先生

日々の更新を心待ちにするのが携帯小説の醍醐味だから、まとめて読んで審査する我々の授賞は読者さんの評価とはかけ離れる部分もあろうかと思います。なので、作家さんにはユーザー評価順位とはまた別の基準で選考されていることをご了承いただきたいです。
その中で自分なりに公平を期すため、「文章力」「官能描写力」「構成力」と、三つの要素に分けて評価させていただき、その集積で選考させていただきました。今回は構成力に優れた作品が多く、官能描写は多少バラつきがあり、文章力については今後の課題という感でした。
その中で文章力ある『海鳴り』が大賞に輝きました。おめでとうございます。しかし、惜しくも下位になった作品がすべての審査員が低く評価をつけたかというとそうではなく、同じ作品を一位に推した審査員と十位に推した審査員があったのです。私たちも大変楽しませていただき、そして勉強させていただきました。ありがとうございました。

海鳴り

短編だが設定と人物像が確りしていてブレないので引きこまれる。父親の漁師も官能小説には珍しいタイプで、かえってそそられた。AV男優なら佐川銀次の役どころか。陸の孤島という設定もエキゾチシズムがあり、坂東真砂子先生の小説を読んでいるときの気分を思い出した。
「乱暴にしたくない、力を抜いてくれ」などのストレートなセリフがこの男を魅力的にしている。
大人になっても幼いような女性心理の描写が、きめ細かくてうまい。武に相沢の様子を聞き出そうとしたり、音読カードに暗号が書かれていないか探したり。
最終章の幕引きも爽快で読後感がいい。前妻をただの悪役にせず、後悔しながら再起にあがいているところ、大人の読み物として噛みごたえ充分である。

異常性愛

男にしか分からない男の性感や、女には受け入れがたい部分も含めた赤裸々な男の心情の吐露に興味がある。女の赤裸々な告白に比べ、男のそれはずっと少ない。その意味で、非常に面白く読めた。
男か女、どちらかに確り視点を定めて書かれた作品が面白いと思うので、徹頭徹尾男性視点に終始し、女性はすべて哀しみを湛えた存在として描いたことが、この長編告白小説を一気に読めるものにしている。
官能シーンも非常に具体的で、大人の男でなければ書けない描写が続き、読み応えがあった。
ラストの締めくくりも秀逸。唯一挙げるとすれば、タイトルはもう一工夫あってもよかったと思う。

~散花~

遠い国の後宮物語か、とちょっと身構えて読みはじめたが、大奥ものの冒頭のような貧しい女性の出仕の話に思わず引きこまれた。プラス文章がうまい。かなり書ける人だし、いろいろと読みこんでいる人の作品だと思った。
官能シーンもくどく語らずに感じさせ、想像させる筆致でうまい。
後宮で性の奉公人になる、そのための職業訓練を受ける・・・という妄想は、若いころにはよく好んでしたので、個人的に好きな題材。それゆえかえって点が辛くなってしまうところだが、決して陰惨な話ではないのに被虐感を煽る内容で、しっかり興奮を誘われた。
文章力・官能・構成力の三つのバランスが揃っており、一位に推させていただきました。

愛すバー

『完熟の森』は深みのある作品だったが、今作では森にはなかった広がりがあり、飽きずに読ませてくれた。どちらかと言えば官能より愛情を描く人だと思いこんでいたが、縄に対する女性の感想など、リアリティがあり興奮を誘われた。
私も今、老人ホーム入居の準備を考えはじめたところで、光代さんのような老後も悪くないなと思った。今、話題になっているホームでの同衾の問題も出てきた。作者の制作意欲がこんなところにもうかがえる。
映像にしたい作品第三位。

誘淫接続

官能描写が具体的。モバイル小説は若い女性にとって絶好のオカズであり、その意味でこの作品のおもしろさを認めない。ましてそれが男の言葉と感覚ではなく、女性だけが知る細かな感覚を描写してくれていれば、最高のオカズになる。男性が描くと、羞恥露出するたびにすぐ見つかって、そのたびにヤラレてしまうので、かえって興奮が冷めてしまう。見つかりそうで見つからない、気づかれているのかも知れないが事なきを得る、その繰り返しがよかった。
ご主人様と連絡が取れなくなったときの苛立ちなど、心理的にもさすがの描写だった。このあたり、男性目線の官能小説にはないので、思いきり引きこまれてしまった。
一般的に女性は女性に責められることに抵抗がある。ふんわりしたレズならともかく、SとMとして君臨されることは、多くの女性は母親に対してトラウマがあるためハードルが高い。女に凌辱される絶望感をうまく描いて興味深い。
ストーリーの起伏、伏線などが素晴らしく、短編ながら小説としての充実がある。今回のノミネート作品から好きな作品を選んで映像化していいと言われたら、私は迷わずこの作品を選ぶ。言葉だけではない絵的な面白さもぎっしり詰まっている傑作だと思う。翠はさしずめ真木よう子だな、一昔前なら黒沢あすかだな、などと考えて楽しませてもらった。

その、透明な鎖を

ストーリー展開の妙味で読ませる作品がふえた中、普通の性行為の官能描写をていねいに重ねるという点では、この作品がいちばんだった。三人称と一人称の混在も、官能を際立たせるには効果的だった。例えば映像ではこういうふうには描けないし、純文学ではここまで描けないのだから、非常に新鮮味を感じて、一字一句味わって読んだ。若い人どうしの官能シーンと中年のそれには明らかな違いがあるべきで、その意味でこの作品は魅力たっぷりだった。
脚本を書く上で、若い人対象の映像作品がない中、お手本を探している自分にとってはとても参考になった部分が多々あった。映像化してほしいと思った作品第二位。
大きな起伏のない詩のような文章だが、ストーリーの起伏で読ませる作品ばかりでなくていいと思うので、これはこれで成立していると思う。その分、大半を会話文で読ませているのを、さらに詩的なあるいは映像的な地の文を、ところどころに効果的にはさんでいくと、さらに感動が深くなるような気がした。
タイトルも詩的で秀逸。

秘密

「こんな私でも、愛してくれる人がいるんです」 最初の不倫に染まる女の気持ち、言い換えれば不倫のもっとも良いときの気持ちはこれでしょうね。
「初めて見た夫の険しい顔は誰かを守る為のもので、自分に向けられていた微笑みよりもよほど真実味があった。」「もっと奥の部屋なら、もっと一緒に歩けたのに」等、女性心理の描写がきめ細かく、ちょっとした一文で感動させてくれる。男にはこうは書けないし、男目線で書くことに慣れ過ぎた自分もこうは書けない。
不倫する自分、不倫されている自分、義母の不倫を見て傷つく自分をうまく描き分けている。民事でしか法的効力を持たない結婚という制度がどこまで個人の幸福を守れるのか。現代人の幸不幸に関わる重要なテーマだと思うが、そこを素直な視点から描いている点が好感が持て、作者の誠実な姿勢を感じた。トリッキーなプロットなのに「あるかも知れない…」と読めてしまうのは、丁寧に誠実な描写を重ねた結実にちがいない。

隠匿の令嬢

ハーレクイン系な感じの設定は私のような年齢になるとクリ勃起しにくいが、若い女性、性の経験の少ない女性であれば、日常の自分からかけ離れているほうが興奮を誘われるような気がする。そういう意味でこのジャンルは存在意義も人気もあるはずだ。
設定は現実離れしていても、官能描写はきめ細かく正確でわかりやすく、しかも美しく品もあり、セックスの知識を得たいと思っている若い女性にとっては願ってもない教科書にもなろうと思う。男性は何を見てペニスが大きくなるのか、など私も10代のときにこの小説を読んでおきたかった。時系列的に無理で非常に残念である。ぜひ、今後も若い(特にバージンの)読者のためになる作品を書いてください。

顧みすれば~真の愛~

愛は迷子になりやすい この愛を見失わないように 10年後も30年後もずっと確かめていこう …は名言。この物語のテーマをしっかりと裏打ちしている。
私はてっきり「性奴隷の流離譚」を読まされるのだと思っていたら、そうではなかった。「43章 愛の行方」は愛することが日常生活に埋まってしまって以降の男女のあり方について真剣に考察し、一つの答えも提示している。決して、愛が減じたわけではない。ほんとうは誰よりも愛している。ただ、あまりに近すぎてアプローチの方法を見失って、見つけられなくなってしまう。女性としての充実を迎える30代の女性にとって、これは現代のもっとも重要なテーマだ。
そう考えてみると、前半の性奴部分と後半の愛のテーマの間がすんなり連繋しない感がある。SM描写について、もう少し詳しく調べてほしい点があった。どうしてラビアではなくクリトリスに入れたほうがいいのか、クリトリスにピアッシングすると具体的にどういう刺激があるのか、フィクションでもいいからもう少し理屈が欲しかった。リングの口枷も、その正式名称を書いたほうがいいとは思わないが、どんな材質でどんな形状でどのように拘束されるのか… という描写が重要だ。あるいは逆に、性奴の話はもっと短くサラリと、心理描写中心にまとめてしまったほうが後半のテーマが活きたかも知れない。

『間違い』電話

間違い電話から見知らぬ女性の夫の不倫現場に行くという設定が面白かった。まあ、そこから使えるオカズストーリーになるのかと思いきや・・・ いい方に予想を裏切られた。ミザリー、レイナに匹敵するオリンピッククラスのストーカー女の誕生だ。オカズとしての官能小説ではなく、官能描写のあるミステリーとして愉しめる。
男性に「女のストーカーって怖いのよ」「ハニトラに気をつけて」などと真面目に忠告すると、「大歓迎だよ~」と呑気な返事が返ってくるが、そんな諸氏にこれを読んでもらいたいと思う。結構年齢が高いというのもよかった。リアリティーがあるし、ただの狂気・オビョーキ・変な人では済まされない、女として普通の人生を積み重ねてきた中でこびりついてしまった孤独、傷つき、コンプレックスとそれを打ち消したい思い込み、などの重層が感じられる。
尚子のような女は現実にはもちろん大っ嫌いだし警戒対象だが、こういう女が破滅に向かっていくのを読むのは、実はちょっと底意地悪い快感で読んでしまう。しかし、夫を奪った女を寝取ってほしい、という気持ちはぜんぜん理解できてしまう。自分自身の内側にも「怖い女」が眠っているのかな、と気づかされてしまう。
どうしてこんな秘密めいた女ばかり集まってしまったんだろう、と賢は言うけれど、秘密のない女なんていない、どんな平凡そうな女でも、清廉潔白そうな女でも・・・ と作者は言っているような気がする。尚子だけが悪女なのではない、麻里や宏美が悪い面を曝け出すたびに、なぜか私は楽しくなっていたのだ・・・。

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■ 総評 深谷陽先生

海鳴り

濡れ場もしっかりありながらそこに頼っていないというか文章も上手くキャラクター一人一人や情景の描写がリアルで魅力的で一般作品として十分面白く読めます。
大漁旗を掲げて船団が帰って来る場面などは、それがどういうものか知らない身でも絵が目に浮かぶようでした。
全ての登場人物の幸せを願いたくなる、優しい物語でもあると思います。

異常性愛

総ページ数にたじろぎましたが、一番のめり込んで読んでしまいました。
主人公の考えや行動、女性の扱いに対しては違和感を感じる人も多いでしょうし、僕自身も共感出来ない部分が多いのですが、そういった「善し悪し」を越えた「読ませる物語力」が図抜けていて、先へ先へ読みたくさせてくれます。
母親との再会のシーンでは不覚にも目頭が熱くなりました。

~散花~

全体的に、達者に描けている作品だと思います。
ただ良く出来ているだけに想像を越えないというか、物語の大半が「下層からのし上がるヒロインとその試練」という類型から抜け出せてないように思います。特にヒロインと皇帝の弟のキャラクターの魅力が序盤中盤を通してあまり伝わってきません。
ただヒロインがそれまで敵でもあった全ての妃達を代表して皇帝と対峙するクライマックス、翻弄されるだけだったヒロインの逆襲は爽快でした。

愛すバー

面白く読めました。
主体となっている、一人の女性の性体験告白もその都度女性の年齢、相手、シチュエーションが変わるので毎回新鮮に感じられました。
単体女優の総集編AV的、と言えるでしょうか?

誘淫接続

序盤の「姿の見えないご主人様」とのプレイの描写は、SM専門的に見てどうかはともかく、臨場感や主人公の反応に生々しさがあって入り込めました。
翠の正体もやや類型的ではあれ、生き生きと描けていたと思います。
しかしながら新宿駅改札あたりをピークにしりすぼみになった感があります。
真のご主人様の正体は、明かされた所で出オチというか意外な人物でした、という以上の広がりが無く、その後のプレイは蛇足にしか見えません。
いよいよ正体を現したご主人様が回線越しでは出来なかった、それはそれは物凄いプレイをするか、あるいは正体は明かされた筈なのに実はそれはフェイクで、真のご主人様から新たな接続があり、その正体は見えないまま…というラストならまだ余韻あって読後感が良かったかもしれません。

その、透明な鎖を

個人的には大変好きな作品です。
主人公の男の子と一緒に美少女「凛」と出会い、ときめきながら惹かれていきました。
凛の抱える秘密など重い部分は多いのですが、少年と少女、若く幼い主人公カップルの瑞々しさが救いになっています。
「…で。」「…を。」「…に。」等、言い切らずに終わる文章のクセがわずらわしく感じる人もいると思います。
個人的には、少年の舌足らずなせつない心情の表現として効果的と感じました。

秘密

家族内の秘密、ということで東野圭吾作品が想起されてしまい、タイトルは更に一考あってもよかったのではと思います。
内容は、主人公の人妻の気持ちがよく描けていて入り込んで読めました。
他の審査員の方からは「展開が読めた」、という評も出ましたが、自分はエレベーターのシーンでまともに驚いてしまい(笑
そうわかってから前のシーンを思い返して、旅行の事、キスマークの事、夫の「彼女」に対する態度、全てが周到な「フリ」となって主人公と一緒に嫌悪感を感じ、主人公と一緒に気持ち悪くなりました。(嘔吐まではしませんでしたが)
「フリ」が丁寧過ぎると、鋭い人には見透かされてしまうこともある。表現って難しいですね。

隠匿の令嬢

キャラクターの立て方、主人公の背負っている物等「道具立て」=「風呂敷の広げ方」は魅力的だと思います。
冒頭からの思わせぶりな展開には興味を惹かれましたが、官能シーンは途中から毎回変化がなくそれでいて執拗に繰り返され、折角の魅力的だった道具立ても畳みにかかってからは都合がいい展開で尻すぼみ感は否めません。
妹との和解のキーとなるキャラも「あれ?こんなのいた?」と思ってしまいました。
作者の方はプロットを立てない、とのことですが展開に自由が利く半面付け焼き刃的にならないよう、ポイントの前には「フリ」を仕込んでおく、その事だけでも意識するとよいのでは。

顧みすれば~真の愛~

前半のドタバタしたコミカルな部分は面白く思わず吹き出したくなる場面もあり楽しんで読めたのですが、後半、主人公が超絶的運命のヒロインに祭り上げられて行くにつれ、物語のスケールの広がりに反比例して「読みたい熱」は下がっていってしまいました。
作中人物が溺れるほどにはヒロインの魅力がこちらに伝わってきませんでした。

『間違い』電話

全編を通じて主人公の相手になる女性に対しての愛情が無く(足りず)、そのせいか濡れ場に入り込んで楽しむ事ができませんでした。最も愛情を持っていた「麻里」とのからみの描写はしごくあっさりとしているし。
どの登場人物にも共感しきれないというのは物語として弱点かと思います。
あとがきに
「一応、謎解きも用意したんですが…そうすると本当にサスペンスになってしまうので、敢えて書くの止めました。」
とありますが、これはこの作品をサスペンス的に楽しんでいた自分にとってはひどい裏切りです。
主人公は何も考えなくてもいいですが、作者様には、その「何も考えない主人公」をどう使えば作品がより面白くなるか、読者がより楽しめるかをとことん考えて、それを文面に反映させて欲しいです。

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■ 総評 大泉りか先生

海鳴り

主人公を始めとするすべての登場人物のキャラがしっかりと立っていて、読んでいてすぐにすっと物語の中に入っていけました。また、一見、悪人に見えるキャラでも、その背景をしっかりと描くことで、読後感の良さを出すことに成功していると思います。ストーリーは若干ベタなところがありつつも、だからこそ、万人に受け入れられる仕上がっているとも言えるでしょう。構成力や筆力も大賞を獲るに相応しいクオリティーですが、ただ少し気になったところは官能の部分が弱いこと。官能シーンがなくても小説として成立してしまうことが、官能をテーマとしたコンテストの大賞としてふさわしいのかを少し悩みました。人間を描くことの出来る作家さんだと思うので、今度はどうしようもないエロスに振り回される人間の生々しい姿を描いた作品が読みたいです。

異常性愛

濡れ場シーンに迫力があり、“抜ける”作品に仕上がっていると思います。ストーリーの展開も、スリリングで、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。ただ、男性主人公のキャラクターがエゴイスティックゆえ、個人的にあまり共感出来ませんでした。そういう意味で読者を選ぶかもしれませんが、ダークな雰囲気も含めてハードボイルド官能として立派に成立していると思います。

~散花~

“女性器”を開発していくエピソードがとても丁寧に綴られており、そこがフェティッシュな魅力を醸し出していて、官能小説としてキラリと光るものを感じました。舞台を『後宮』にしたことで、他作品との差別化に成功しています。文章も上手ですし、背景などの描写もしっかりとされているので、あまり馴染のない『後宮』という世界観に浸る事が出来、楽しく読ませていただきました。

愛すバー

女性が読んで、ドキドキしながらエッチな気分になれて、最後はすっきりと後味よく読み終えることの出来る、味わいの深いとてもいい作品だと思います。“戦後”という時代に振り回されたひとりの女性の愛と性、悲しい出来事に次々と見舞われても、その都度立ち上がって、逞しく生きる姿に好感が持てました。ひとつ惜しいと思ったのは、その時代の描写がとても少ないこと。もっと戦後の雰囲気を書き込めたらより一層素敵な作品になったと思います。

誘淫接続

ヒロインが耐えることの出来る、“ギリギリのライン”に甘んじず、きちんと、その少し上を行くところが「わかってる!」と思いました。“SM”をテーマとしているので、プレイのバラエティーが豊かなところも、官能小説として好評価です。濡れ場の描写も巧みで、ヒロインの心情描写と合わせてしっかりと描かれていて、とても上手な作家さんだと思います。個人的には大賞ですね。ちょっと惜しいのが“ご主人様”の人間的魅力のなさというか、個性のなさ。ヒロインや翠はこれほど魅力的なのに……また、SMによる人間関係の確変を描くのならば、ラストをもうひと捻りをすると、より素晴らしい作品になったと思います。

その、透明な鎖を

まずタイトルがいいですよね。受賞作品も含めて、タイトルが「惜しい」と思う作品が多いのですが、この作品のタイトルは他を抜きん出ていると思います。内容については、青春官能小説というのでしょうか。甘酸っぱさと、どうしようもなさに、読んでいて胸がキュンとしました。最後まで言わずに「。」で止めるという独特の文法が、全体的に余韻を与えてはいるものの、ちょっと読みにくく感じました。

秘密

夫とのセックスに不満を持っているヒロインの気持ちが細やかに描かれていて、それゆえ、倉本との不倫の関係についても、嫌悪感なく読めますね。不倫願望を持つ主婦層から、熱い支持を得ることの出来る作品だと思います。どんでん返しに関しても、わたしはとても驚きましたし、また、その「気持ち悪さ」がこの物語の面白さを増すことに成功していると思います。個人的には賞にランクインしてもいい作品だと思っています。

隠匿の令嬢

「これぞ女性向け官能ノベル!」といった作品です。世界観がきっちりと確立していますし、また、こういう作品が好きな女性が「キュン」となる舞台設定もカンペキです。本当はこの作品もなんらかの賞を受賞して欲しかったのですが、男性の支持を集めにくいところが難しかったかもしれません。ただ、この作家さんはこの路線を貫いて欲しいです!タイトルはもっと柔らかで、わかりやすくてもいいかもしれませんね。

顧みすれば~真の愛~

ユニークなヒロインにぐいぐいと魅かれ、とても楽しく読み始めましたが、途中から思わぬ展開になり、正直、驚きましたし、ちょっと置いてけぼりにされた気分にもなりました(苦笑)。キャラクターの魅力をしっかりと伝えることの出来る筆力の持つ作家さんだと思います。個人的な希望になりますが、そこまで壮大な風呂敷を広げるのではなく、もっと身近な舞台で、ヒロインがイキイキと活躍するラブコメディー的な、女性向け官能作品を読んでみたいと思いました。

『間違い』電話

サスペンスが下敷きになっているので、読んでいて展開が気になり、ハラハラしながら楽しく読めました。ケータイ小説の文法でなら問題はないと思いますが個人的には「…」の多用がちょっと読みにくかったし、稚拙な印象を与えてしまっているのが勿体ないな、と思いました。それを抜かせば、言葉選びも上手く、官能描写にも長けていますし、シリアスなシーンでは、ゾクゾクとさせられました。

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■ 総評 渋谷さえら先生

前回の受賞作をふまえて、といった内容の作品が多く、オチにインパクトがあるタイプとハーレムタイプの二極化されたイメージがありました。投稿しているうちは最初から賞狙いではなく、(もちろん他人に読まれる事を前提として)書きたい物を書いた方がきっと楽しいと思います。作品のレベル自体は前回よりも格段にクオリティがあがっていてとても読み応えがあるものばかりでした。キャラクターの作りも丁寧で一貫したテーマをしっかり書ききった作品ばかりで作者さんの作品に対する愛情をひしひしと感じました。
あとは「いかに一見の読み手でも読みやすく判りやすいものが作れるか」にかかってくると思います。【読みやすい、判りやすい=稚拙、簡単】ではありません。凝ったトリックを考えるより誰にでも判る物を作る事の方が実は難しかったりします。事実「これが出来てればなー、もったいないなー」という作品もありました。
やはり現段階でこれだけ素敵な作品が描ける方が揃っていらっしゃる訳ですから、そんな方々が今より更に素晴らしい作品を生み出して下さる事を熱望しております。
イチ読者として今後も皆様の熱い作品を心待ちにしております!

海鳴り

とてもいいお話でした。直也だったり最後のバスの運転手さんだったり脇キャラに魅力的な人が多かったです。和男が海の男!で武骨なキャラでしたが性描写の部分が丁寧な事もあり、荒々しいんだけどどこか愛情を感じる繊細さがあってよかったです。ラストは切ないんだけど誰も不幸になってないというのがとっても良かったです!読後感が良いって本当に大きいと思います。大賞おめでとうございます。

異常性愛

最初の方の主人公の加虐嗜好が覚醒していく所は官能小説として見るとエロさはダントツで、その部分の描写は大好きです。ごちそうさまでした。ただちょくちょく読み手を置いてけぼりにしているところが多いです。そのせいで全体的に冗長に感じました。読んでて胸糞悪いシーンも多々ありましたが胸糞悪いシーンをしっかり胸糞悪く書けるのは素晴らしいです。晶子のおじさんパートの胸糞加減は絶妙でした。

~散花~

男性キャラのイケメンさが文章から溢れ出ていました。
主人公の純真無垢さに最初はおいおい大丈夫か…と思っていましたがだんだん「頑張れ!」とエールを送ってしまいたくなるくらいキャラクターに感情移入してしまいました。そういうキャラクターを作れるというのは才能だと思います。うらやましいです。キャラ作りのその才能わけてください。

愛すバー

おばあちゃんが娼婦だったのにビッチ感がなくてキャラに好感が持てました。
男性器を食べ物に例えているところが目新しい表現で良かったです。台詞回しや擬音、男性器を表す食べ物のチョイスなど、センスに微妙な古さを感じましたがそこがまた作品の個性として面白かったです。

誘淫接続

選考作品の中では一番性描写に気合いが入っているのではと思いました。
貞操帯だとかレザーだとかの露骨な所に官能小説っぽさを感じました。
オチのためにわざとかもしれませんがいかんせんラスボスが空気すぎるのでは。
どっちかというと中ボスの方がインパクトがあったので、いっそそこで終わらせておいた方が…という気がしないでもないです。

その、透明な鎖を

個人的に一番大好きな作品でした。
何が良いって主人公の男の子の青臭さが凄く良いんです。思春期の男の子の心理描写が凄く丁寧なんです。どんなにイキがっていても大人の男には勝てない所だとか女の子にどんな過去があっても自分はそれもひっくるめて彼女を受け入れる!という愚直さだとかそういった思春期特有の未発達な心理描写が素敵でした。エロシーンも、自分の愛情を全て彼女に注ぐ所に男の子の幼さを感じて胸がきゅんきゅんしました。

秘密

女性心理を描く事に長けた作者さんだと思いました。
特に主人公が旦那の浮気を問いつめて壊れていくシーンはすごかったです。
完璧に主人公に感情移入してしまっていただけに最後のオチはびっくりしました。
読んでてちょっと「ヒェッ」て声が出ました。今回選考まで残った作品の中の、オチにインパクトがあるタイプのものでは一番ではないでしょうか。

隠匿の令嬢

この舞台設定とキャラクター設定だと結構なボリュームになりがちですがそれをここまでまとめているのがすごいです。
お家柄の確執だったり、キャラクターそれぞれに起こる問題を、キャラクター自身の過去にしっかりひもづけた上で解決させていってるので読後感がとても良かったです。また、それに関連づけて「どうしてこのキャラクターがこういう性格でこういう生き方をするようになったのか」までキチンと描かれている所がとても判りやすくてよかったです。

顧みすれば~真の愛~

前半詰め込み過ぎ、後半冗長過ぎで話のテンポがあまり良くないです。
最初は割とリアル路線なんだと思って読んでいましたが読み進めていくうちに「ん?」「あれ?」と思う部分が多くなり、結果何のどういう話を書きたかったのかが全然判りませんでした。
最初の性奴パートのエロシーンが良かっただけに残念です。

『間違い』電話

このオチが書きたかったが為にこの話を書きましたーという感じがします。
一つの作品を作りあげるきっかけとして「こういうオチの話を書きたい」というのは良いんですが、
その為に必要となる「キャラクター」や「情景」などのパーツひとつひとつのつくりが雑でした。
そして登場人物と物語がなかなか噛み合わず、読んでいても判らない箇所が多々ありました。
キャラクター自体の作りも雑だったので感情移入も出来ず…なんか勿体なかったです。

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■ 総評 山咲美花先生

今回は官能小説の審査員させて頂きまして、非日常を日常として生きているわたくしにとっても、とても刺激的で貴重な体験となりました。

少し辛口のコメントになっていますが、すべての作品にそれぞれの良さがあり、個性が出ていたと思っております。
一作品一作品、しっかりイメージをしながら読ませていただきました。
文章でどこまでイメージをふくらますことができるかを重視しました。
『官能小説』の“官能”部分と“小説”部分に注目してみるとさらに感慨深く、こっち立てればこっち立たずというのが正直なところです。
また、SМ的視点でも感想を書かせてもらっております。
次回はさらなる刺激を期待しております。

海鳴り

かなりの高評価させて頂きました。読んでいてイメージがすーーと入る文章でした。
潮の香りがして、波の音が聞こえ、町の風景も人物も実在している。あたかも目の前で起こっているかのような感じがするほどでした。物語も、深く、切実さが描かれていたと思います。
ただとても残念だったのが『官能』という部分では、やや物足りなかったなーっと思いました。

異常性愛

体験告白ということもあり、また、SМ要素が入っていたので、作者さんはどのような人物なのであろうか、まずそこから入り読ませていただきました。
始めの部分の加虐性という部分に思わず反応してしまいましたが、作者さんははたして?肉体的S・精神的Мなのではないかと思いつつ読み続けました。
官能部分の漢字の多さは、まるで鎧をさらに盾をと思わせるかためな印象の文章でした。
また、内容的には赤裸々でとても面白かったのですが、途中2か所ぐらい飽きてしまった部分がありました。もう少し簡略化させてもよいのでは?
しかし、体験をしつつ自分を見つめなおす、気が付いていく、弱さを認め進んでいくところは素晴らしく、感動させてもらえるところも多々ありました。『官能』という部分で評価させていただきました。

~散花~

大奥を思わせる小説でとても好きです。女の嫉妬もよく描かれていたと思います。お妃教育がとてもいいですね。女が成り上がっていく様、覚悟決めのところが好きです。純愛的要素も含まれていてよかったのですが、個人的にはもっと『官能』シーンがドロドロとしてほしかった、という感想です。

愛すバー

とても読みやすく 色で表していた部分が新しいと感じました。
光代の過去の遍歴が描かれていて、このまま終わるのかなっと読んでいると完結部分が偶然ではなく必然であると思え、綺麗な終わり方だなと思いました。ストーリーも良く『官能』という部分も惜しみなく入っていたと思います。わたくし個人的にはとても高評価させて頂きました。

誘淫接続

SМをテーマということで期待感が大きかったせいなのか、少しがっかりしてしまいました。SМの住人として少し厳しめに見ていたのかもしれませんが。登場人物の行動描写はとても細かく書かれているものの、精神的部分また愛という部分に関しては、描写が少なかったのかなと思います。麻琴の『ご主人様』が実は麻琴が見下していた翠だったというところは萌えポイントでした。次回の作品を期待しています。

その、透明な鎖を

純愛、まっすぐな愛を描かれていたと思います。シンプルで若干先読みが出来てしまうところが少し残念な感じがしました。共依存、切っても切れぬ繋がりの深さ、そうでなければ成り立たぬ関係など父と子の関係性は、個人的には萌えシーンでした。官能という部分では、やはり物足りなさを感じてしまいました。

秘密

昼ドラを思わせる臭いがぷんぷんとしました。
夫に相手にされぬ妻が女に目覚めていく――。大人になってから知る愛が描かれていて、大人の純愛を感じました。実は義理の母と夫ができていたという、ドロドロとした人間模様は好きですね。
わざわざキスマークを残しておいて、また何事もなかったかのように振る舞うなど、女の心理描写が秀逸。この作品も先読みが出来てしまったことがとても残念でもう少し驚かせてもらいたかったです。またここまで女のドロっとした部分を書いてくれたのなら官能部分ももっとドロドロしてほしかったですね。

隠匿の令嬢

シンデレラ的ストーリーなのかなと思いつつ読み進めていましたが 純愛・トラウマを乗り越えていくところが描かれていました。また、アリエッタには根っからの自虐性が含まれていると個人的に感じました。それゆえ、レオに徐々に肉体的調教されていくシーンは面白かったです。
目(眼)の描写をすごくこだわっていたところもフェチ度が出ていたな、と思いました。

顧みすれば~真の愛~

わたくし的にはこの作品もとても読みやすくてよかったです。アミのような性奴は現実にいますし、実際見たこともあるので、とてもイメージしやすかったです。
なぜアミが性奴になったのかもしっかり描かれているし、愛によりアミ~サエに戻っていくところが良かったですね。ただ、途中から話が飛躍しすぎでは?と思われるシーンもあって、そこがとても残念でした。

『間違い』電話

小悪魔的な尚子、間違い電話もきっと偶然ではない意図があるのでは?と読み進めていきました。読みやすさはありましたが、報復に至るまでの人間模様が複雑すぎて図で書いたぐらいです。
逆恨みともいえる女の執念がとてもよく描かれていたのではないでしょうか。それを表すように、尚子の最後の捨て台詞がすべてを物語っています。
全体的に読みやすく面白かったですが、途中で繰り返され過ぎるシーンにやや飽きてしまったところもありました。

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