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第1章 世界の終わり。始まりの二人。

　二人は未だ座位でつながったままである。娘は父の背中に回した両腕に力を込めて、しっかりと父に抱き着いた。

　「華。幸せになろうな。」
　「あたりまえじゃない。損しちゃうもの！」

　その会話を最後にシェルターの中は轟音に包まれた。

　9.8m毎秒毎秒の力で地表に吸い寄せられていく彼らは、あと10数分もすれば無事地表にたどり着くことだろう。

　そして、緑広がる大地に生まれたままの姿で降り立ち、選ばれた「つがい」として新しい世界を創る義務を負うのである。

　彼らがそこで柚子や母と再会できるかどうかはわからない。
　そして降り立つ地上もエデンの園ではないだろう。

　文明の完全に失われた地で生き残ることは、あのまま死に去ることよりも辛い現実となるかも知れないのだ。


　しかしそれでも、と娘は思う。


　一人じゃない。一人じゃなければ、生きていける。

　そして、新しい世界でいつか必ず柚子や母と再会して、あの家を再び取り戻すのだ。

　父の体温を全身で感じながら、娘の決意は固い。
　そしてそんな娘の中に宿った新しい生命も、彼女と父を支える原動力となるに違いなかった。



　二人は最後の一つの流れ星となり、勢いを増して地上へと落下していった。





　＝＝ 父と娘の近親相姦日記 ＝＝　【完】