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影に抱かれて
第9章 待ち受けるもの
あの、初めて学園の門の前に立った時には、厳しい表情の修道士の冷たい出迎えを受けた。しかし今、リュヌの目に映ったのは……
少し年老いて、ゆっくりと歩を進める懐かしいジャンの笑顔だった。
「おお、リュヌ……早く顔を見せてくれんか」
門の鍵を開けたジャンが、ランタンでリュヌの顔を照らす。
リュヌは目頭が熱くなるのを感じていた。学園を卒業もしておらず、思っていたのと形は違うが、ついに帰って来たのだ……
一歩前に踏み出た途端、ジャンに強く抱きしめられる。ランタンを持ったままのその仕草はぎこちないものだったが、リュヌもジャンの背中に手を回し、二人は暫し抱きしめ合うのだった。
「やはり生きておった……信じていたが、やはり顔を見るまでは安心できんものじゃな」
「ジャン……ごめんなさい、心配を掛けて……」
「いや、お前も苦労したじゃろう。リュヌ、二年の間にこのように成長して……」
ジャンの涙声を聞いて、リュヌの瞳にも涙が溢れる。
しかし抱擁を交わしていたのはほんの短い時間で、ジャンはすぐに身体を離し歩き出す。そして並んで屋敷に向いながら、以前のようにてきぱきとリュヌに指示を出した。