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第2章 兄妹格差

「た、立花先輩。
今日ここに来るって胡桃ちゃんに言ってなかったんですか？」


機嫌が悪いってワードを聞いて、香さんが困ったように兄ちゃんに話しかけた。


─── 香さんは、お兄ちゃんのお嫁さん。

去年の７月に結婚式を挙げたから、ちょうど１年経ったところ。

２人は同じ会社で働く同僚で、先輩と後輩だから
夫婦となった今でも、香さんは癖でお兄ちゃんを先輩って呼ぶし敬語を使うらしい。


「言ってないよ」

「もう、それじゃ胡桃ちゃん困るの分かりますよ。
てっきり言ってあるかと…」

「別に実家に帰るくらいいいだろ。
胡桃、これ香にも回して」


キッチンに居るお母さんに渡されたアイスティー２つを、私の前に差し出すと
気まずそうな香さんを余所に、お兄ちゃんは涼しい顔してカランと氷を鳴らした。


……バカ兄貴。

お嫁さんの気持ちってもんを全然分かってないんだからっ！
旦那の実家に行くだけで緊張するって言うじゃんか。

こんなふてぶてしい妹がいるなら、余計にそう思うけどなっ。