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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

 だが一方で同時に、正直は自身の言葉を思い返していた。


『それは……違う』


 その言葉は、キスが不快であったかと問われた、正直の返答である。もしかしたら唯は、そこに『嘘』があると責めていたのではないか――とも、思わせていたのだ。

 その二通りの解釈が、唯という存在とその心を更に謎めかしている。

 唯の素顔を見たい。正直の欲求は高鳴る。

 しかし、決して無理に覗き見ようなどとは、露ほども思わない。

 が、もし――唯が自らマスクを取り、正直にその素顔を晒すのなら。

 傷があろうと、なかろうと。美しくとも、そうでなくとも。そんなことは関係ないように、思えていた。

 仮にその瞬間が訪れるのなら、それは唯が閉ざした心を解き放つ――時に。


 正直は胸の中で、今の二人の日々を、その為の時間なのだと位置付けていたのかもしれない。


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