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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

    ※    ※


「……」


 暗い――まだ見知らぬ、部屋。

 モニター画面の青白いくすんだ光が、ぼうっと浮かび上がらせているような――奇怪なマスク。

 唯は呆然としたまま、そのモニターに映る――正直を見た。近くに寄りすぎるから、妙に輪郭が膨らんで見える。その顔は不思議そうに、こちらをじっと窺っているかのようだ……。

 やがて、正直の姿が画面より消えた。チェストから着替えを手に取っていたから、シャワーでも浴びに行ったのだと思った。


「ふ……」


 唯は、ごく細やかなため息を漏らす。別に何かにがっかりしたのとも、ほっとしたのとも違う。単にひと段落を表すような、そんなため息である。

 そして、そんな時だった。


「――!」


 珍しく自らの携帯電話が奏で始めたその音を――唯は、耳に止める。

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