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蕩けるようなキスをして
第8章 おねーさん
生意気で、小馬鹿にしたような、笑み。
そんな笑顔で、陸は華夜子を見遣った。
「…久し振りって」
言葉が続かない。
渇いた喉では、それを言うだけで精一杯だった。
陸は無言で重ねて笑い、入り口に最も近い机に座った。
「食べたら、すぐ行くからさ。五分だけ、一緒にいさせて」
手にしていたコンビニの袋からお茶のペットボトルとパンを取り出し、食べ始める。
いつか-中庭で垣間見た、憂いを帯びたような横顔。
またその表情で、前方の黒板をじっと見ながら、彼は機械的にただ口を動かしてる。
美味しく食べる-と言うよりは、とりあえず、ただ、空腹を満たすだけの行為のような。
そんな陸の様子を、思わずじっと見ていた華夜子の耳に、他ならぬ彼自身の声が届く。
「おねーさん、こないだの友達は?」
陸の横顔が、問い掛ける。
まさか話を振られるとは思ってもいなかった華夜子は、慌ててしまう。
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