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幸せの時効
第1章 再会
 あれはもう15年も前の事なのに突然思い出す。

 切れ長の目から涙を溢し、愛してると叫んだ男の顔。心をひきさくような痛み。そして彼と愛し合った夜のこと。
 あれはどうしようもない恋だった。彼には美しい妻がいた。その妻に罵られたとき、私の心は死んでしまった。

「湯島教授、お久しぶりです」

 私が声をかけると、その人は振り向いた。最後に見た時よりも若干くたびれてはいたが、相変わらずどこか抜けているような姿に、15年前の彼の姿が重なる。

「高島、久しぶりだな……。もう15年になるか」

 懐かしむような目で私を見るその目は、どこか悲しげに見えた。私はその目を避けるように、側のソファに腰掛けて鞄の中からテキストを取り出した。

「世間話をしている時間もないので、早速よろしいですか?」
「ああ、電話では解釈に苦しんでいる所があると言っていたな。どこだ?」

 彼は私の向いに腰掛け、テーブルの上に置いたテキストを取りペラペラめくり始めた。眼鏡の奥の瞳がテキストの文字を追う。 その様子を眺めていると、この男に恋していた自分を思い出した。
 19才の世間知らずな小娘が、魅力的な男に恋をした。そしてその恋に身を焦がし、罪深い炎にその身を投じた。若い頃の話だ、何も知らない頃だからこそあんなに無謀になることができた。彼の細くしなやかな指がページをめくる度、私はその指の動きに釘付けになった。その指が私の体を隅々まで這い回り、私はその度嬌声をあげ、悦びを感じていた。しばらく彼の指を見つめていると、彼は私に声をかけた。

「高島? なにぼーっとしてる」
「ああ、すみません。考え事を……」
「そんなに忙しのか? 検事ってやつは」

 まさかその人の指の動きを眺めて、昔のことを思い出していたなどと言えるわけがない。少しだけ笑顔を作る。

「先月まで色々預けられて大変でした」

 先月までは本当に忙しかった。ほぼ毎晩執務室で寝起きして、事務官に説教されたほどだ。私の体と心はもう悲鳴をあげることはない、だからどこまでも忙しくすることができた。

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