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第16章 【グレイファス視点】　亜人との出会い

　その時、がちゃんと玄関が開く音が聞こえ、誰かが中に入ってきたみたいね。

　人の気配が、足音が近づいてくる。

　逃げ場なんてどこにもないわ。
　
　――ベッドの下、クロゼットの中に隠れるという考えが浮かんだけど……手足が動いてくれなかったわ。

　身体に力がまるで入らなくて……がちゃんとドアが部屋の内側に開いてゆき、一人の女性が中に入ってきたわ。

「あ、目が覚めたみたいね。良かったわ」

　とても冷淡な声で、背筋がぞっとし、体感温度が下がった気がした。

　しかも女性は磨き上げられた白大理石のような、真っ白なロングケープケープを身につけており、そこから覗く足は、ガラス細工のように華奢で、切れ長く氷のように冷たい瞳は、凄まじい殺気を放ち。

「あとこれ……着替えね。そのままだと風邪引いちゃう思って……買ってきてあげたわ」
「ありがとう、ございます……」
「そんなに怯えなくても大丈夫よ。目つきが悪いのは生まれつきで、別に怒っているわけでもないし、取って食おうとしているわけでもないからさ」

　フードを深く被っているためその顔はよくわからないが、間違いなく人間なく亜人だわ。例え亜人だとしても命の恩人であることは変わりありませんから……。