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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 
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 熱でぶっ倒れていた課長にあっという間にイカされたあたしに、ご奉仕しようと襲いかかってくる課長は、多分発汗と解熱剤効果で回復しているのだろう。確かに一時期より彼の体温は高くない。

 だけどまだ38度はあるだろう気怠げな表情とハアハアと息が荒い様子を思えば、こんなことしている場合でもないのに、なんでここまで我武者羅に求めてくるのかよくわからない。

 まだ再会してからそこまで日にちは経っていないけれど、会社で見るなんの執着もないような涼やかな表情から見れば、少し異様にも思えた。

 そう、置き去りにしようとする母親に縋っているような。
 
 離したくないと繰り返し言って、あたしを快楽のうちに縛り付けようとする彼は、欲情した目をしながらも酷く悲しげなもので。

 そんな目をされたら、あたしは帰れなくなる。

 あたしは、課長が落ち着いたら帰るつもりでいた。

 だけど、帰れなくなった。

 彼を放るわけにはいかなくなった。


「ヒナ……っ」


 決してあたしの顔を見ようとしないで、あたしの名前を呼んであたしの身体を弄り、だけどあたしがイク時にだけキスをして舌で繋がる課長。

 深く繋がるのは舌だけだというのに、性器の挿入があったように子宮がきゅんきゅん疼いて喜んだ。ぐっしょりと湿った下着が気持ち悪いくらいに。

 満月以外でこんなになるのは初めてで、満月であったらどうなっているんだろうか――。


 九年前、本当にあたしは気持ちよかった思い出しかない。彼という存在を封じられても、あの気持ちよさは身体が覚えている。

 九年後は、どうなんだろう。

 今の彼と深く結びついたら、どこまでの快感を得られるのだろう。


 あたしのブラウスのボタンを外しているのに、課長はあたしから服も下着も取らなかった。パンストは破れたけれど、スカートもショーツも取らなかった。

 だけど自分はパジャマの上衣を脱いで、あたしを強く抱きしめてくる。その直接の熱と匂いに、あたしの身体が蕩ける。


「……凄い。また溢れてる。……気持ちいい? ヒナ」


――気持ちいい? チサ。


 九年前が思い出される。

 彼は今なにを考えているのだろう。

 
 彼が果てさせているのは、九年前のあたし?

 今のあたし?
 
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