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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

「そうそう、そんな感じ。キューの持たない左手は、こんな感じで親指と人差し指で作った輪の中にキューを差し込むんだ。他の三本の指を台につけて固定する。台から10cmくらい離れて、キューを持った右手の肘の角度が90度になるように曲げ、そのひじを固定し支点として、振り子のようにキューを振る」

 ぐはっ。

 優雅で手足の長いイケメンにビリヤードをさせたら、殺人ものだよ。


「陽菜?」

「あ、はい」

「こんな感じでボールをキューで押し出す」

 ボールは小気味のいい音をたてて、まっすぐのところにあるポケットに吸い込まれていった。

「凄い、凄い、あたしもやる!!」

 音だけでこんなに爽快になるんだ。自分でやってみたい。

 ええと、姿勢はこんな感じで、左手はこんな感じで、突く!!

 ぽすっとでもいうような、間抜けた音がしてボールがへろへろと動き、途中で止まる。

「なんで!?」

 簡単にできると思ったあたしは、ご立腹だ。

「左手が動いて、ボールの真ん中を突けてないからだ」

 また朱羽が手本を見せてくれたが、少しキューを持つ右手が動いただけで、ボールは強い勢いでガコンとポケットに入る。

「朱羽のを思い出して……狙いはOK、このまま真ん中を……突く!! あれ~」

 ボールはあたしをあざ笑うかのように、まっすぐではなく横に動いただけだった。

「肘が開きすぎだ。ちょっと構えてみて」

 真剣になって台の上で構えていると、朱羽が後ろから抱きつくようにして、あたしの左手と右手を修正する。

 ふわりと漂う朱羽とウイスキーの匂いに、九十度に保たないといけない腰が崩れそうだ。
 
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