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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

 習ったことを思い出して構える。

 手玉はどこに置いてもいいと言われたけれど、それはそれで困り、ポケットから一直線になり打ちやすいところに置いてみた。

 コーン。

 いい音はしたのだけれど、ポケットではない方向に飛んで行き、跳ね返る。

「うん、うまいうまい。いい音だ」

 朱羽が拍手をくれてその気になって照れたが、ポケットに入らなかったんだから無意味だ。

 朱羽が台を回り、手玉を変なところに置いた。

「え、入らないよ、そこなら」

 朱羽は不敵に笑った後に強く手玉を打つと、ピンボールのように跳ね返りながら、ガコンがガコンとあっという間に三つがポケットに入る。

「うっそぉぉぉぉ」

 台の上には、球がふたつ。

 九個あったものが七つ既に入れられてしまったことになる。

 焦ったあたしが打ったボールは勢いがなく、カツンと紫のボールにあたるのだが動いてくれない。ポケットまでもう少しなのに少し動いただけで止ってしまった。

「なんで~」

 朱羽は嘆くあたしの頭を大きな手で撫でた。


 ボールはポケットの前にひとつ、その横にひとつ。

 ポケットに近いボールを入れるためには、その横のボールを救済できない。


「よし、勝った!!」

 そう喜ぶあたしに、朱羽は意味ありげに笑うと台に手玉を置いた。またその置き方がポケットの方ではない上に、台に腰掛け身体を捻る。

 そして上からキューで手玉を打つと、ポケットの横にあるボールに手玉があたり、ぶつかったボールが今度はポケットの前にあるボールにあたり、ふたつともポケットの中に吸い込まれた。

 ざわっとした。

「やったぁぁ! キャノンショットが決まった!」

 珍しく朱羽が破顔して拳をつくって悦び、この偉業を目にしたあたしの身体は興奮している。


「はい、陽菜。脱いで。どこからでもいいよ?」

 台に腰掛けたまま、ウインキーを飲みながら流し目を寄越す朱羽の顔が艶めく。

 ああ、なんでこのひとこんなに格好いいんだろう。

 シャツから覗くあの身体に抱きつきたいほど、あたしは……。


「へ、下から脱ぐの!?」


 朱羽がげほげほと咽せた。
 
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