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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

「どこか出かけるの?」

「結城さんに言われたんだろう? 美味しいケーキって」

 朱羽に言われるまで、ピロートークをしたことを忘れていた。

「せっかくあなたの背中を押してくれた結城さんには、とびっきりのケーキをあげたい。それと真下さんもね。あ、渉さんと沙紀さんもだ」

「うん……」

 結城に妬くくせに、こういう優しいところが好きだ。

「あなたに、服を買ってあげたいな」

「え!? いいよ、あたし家にあるし」

 艶めいた流し目が送られる。

「脱がすの前提」

「朱羽!!」

 あたしが真っ赤になって怒ると朱羽は笑う。

 本当に朱羽はよく笑う男だ。

「あなたシンプルに白黒ばかりだろう? 俺もモノトーン好きなんだけれど、あなたには違う色を贈って上げたいと思う」

「違う色?」

「そう。モノトーンはきっと、あなたが過去のことを封印した忌み色だと思うんだ。満月から解放されたのなら、あなたも忌み色から解放されてもいい」

 忌み色――。

 確かに葬式のような色ばかり好んできた。

「俺はね、あなたは可愛らしい、淡い色が似合うと思うんだ」

 朱羽の眼差しはどこまでも優しい。

「淡い色……」

 あたしが忌避してきた色だ。

「満月を克服したあなたにとって、きっと今日からは世界が違って見えるはずだ。あなたの色を探しに行こう?」

 闇から抜け出たところにあるあたしの色は、何色なんだろう。

 朱羽と、新たな色を見つけに行くことになった。
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