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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon


 4つの選択肢のうち、1.をした途端に結城は陽菜の肩を持って、今度は私を責めるだろう。うざいことこの上なし。

 2.をするには、この男うるさすぎる。

 だとすれば3.か4.で、私の心は限りなく4.に近かったけれど、そこを同期のよしみでぐぐぐぐっと堪えて、3.を決行する。 

 酒がまずくなると私はぶちギレ、結城の悪いところを具体的な例を持ち出して、延々と滾々(こんこん)と結城に説教したのだ。

 『こんな調子だったら私とだけではなく、陽菜や香月とも友情は終わりだ。会社で大変な時に、陽菜しか考えられないうざくて馬鹿な男が、香月に勝てると思ってるのか。見返してやろうと思わないのか、この筋肉馬鹿!』

 ……これは要約で、実際はこれでもかというほど、けちょんけちょんにやりこめた。営業では課長の座を渡したけれど、プライベートは口で負けるものか。ストレートな言葉でダメ出しをした。

 こんな私でも結城の気持ちはわかる。私だって雅さんに拒まれた時、泣きたいし叫びたいしで大変だった。

 だけど私は、雅さんの会社にも愛情を注いでいるから、振り切るように仕事を頑張っていたんだ。自分の想いがだぶってしまい、悔しくも涙まで流して結城に言うと、結城は……笑いやがった。

――お前だけだよな、全力で俺にダメ出しくれるの。

――それって俺のこと、見てくれてるってことだろ? しかも直球で投げてくるから、傷心の心にぐっとくるわぁ~。

 不覚にも、このドMが見せた笑顔にドキンとしてしまった。

 なにを言っているんだ、この馬鹿は。これなら私達は傷の舐め合いから愛が生まれたようないい方だ。

 な ん で そ う な る !!

――あいつは俺を持ち上げ、お前は俺の穴を塞ごうとする。それでさ、一丸となってくれる仲間が居て、特に香月が……俺の横で色々と足りない俺の頭を補ってくれるのなら、そうしたら俺、社長でも何でもできそうな気がするんだ。

 ありえない。ありえないのに……雅さんにも似たその強い瞳。

 血の繋がりなどない、全くの他人なのに、頼もしくて愛おしい雅さんの面影を重ねてしまったのは、きっと私もまた、結城に付き合った酒でほろ酔い気分だったから。
 
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