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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon


「ああ、仲間として結城さんを支えるという意味なら……」

「そんなのじゃなく、プライベートでだって」

「は?」

 馬鹿真面目な香月。近寄りがたさがなくなるこうした瞬間が、結城は気に入っているのか。とても楽しそうだ。

「お前、こいつと喧嘩したり困ったら誰に相談するよ?」

「え、渉さん……」

「即答すんな。専務より、俺の方が身近だろうが!!」

「は?」

 うわ、あの馬鹿。恋愛相談に乗る気かよ。あんたの方でしょうが、恋愛相談したいのは。


「俺、男の友達っていねぇんだわ。ということでよろしく」


 結城が手のひらを香月の顔の前に出した。

 香月は意味がわからないらしい。途方に暮れているようだ。
 
 陽菜すらわかっているのにね。

「朱羽は? 結城のこと友達に思えない?」

「え? だけどあなたと付き合ったら、事情が……」

「両方手に入れろよ、……香月。鹿沼と俺と」

「え? は?」

「お前頭悪いな、頭いいくせに。プライベートでも友達になろうって言ってるんだよ。俺と鹿沼みたいに、お前も俺と友達しようってことだよ。嫌か?」

「嫌ではないです、それは光栄ですけれど、あの……」

「なんだ?」

「友達って……なにをすればいいんでしょうか。俺、友達が居たことなくて。結城さんは……俺になにを期待しているのかなって。あの、残念ですけど俺、陽菜と別れる気は……」

「はああああ!? それは友情ではなく打算っていうもんだろうが!!」

「す、すみません。俺、打算以外に結ばれた友達っていたことなかったんで」

「お前どこまで、可哀想な奴よ。俺の方がマシじゃねぇかよ。もう俺が教えてやるから。お兄様が今度、居酒屋に連れていってやる」

「居酒屋でなにを……」

「酒を飲むんだろう!? 他になにしたいよ、お前は!!」

「え、陽菜とデート……」

「傷口抉るな、アホ!!」

 エリート香月にアホと呼べる結城は一体何者なのか。

 奴はボケにしかなり得ない人種だと思っていたけれど、奴をツッコミ役にさせる男がいたなんて、世も末だ。
 
 私は堪えきれず、大声で笑ってしまった。
 
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