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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 シークレットムーン統括管理責任を専務に求めるつもりだろう。……シークレットムーンを向島に売却した上で。

 専務は言う。

――副社長は、向島の力を見くびっている。向島の手を借りた途端、それを逆手にして足元をひっくり返される。あいつは、忍月財閥を目の上のたんこぶにしている向島財閥を受け継ぐ者として、損得で動く非情な男になった。

 あいつとは、向島専務のことだ。

――シークレットムーンと共に、向島に、自分も忍月も壊されるということを副社長は危惧していねぇんだ。忍月は最高峰という奢りがあるからな。

 現実がわからない副社長はきっと、シークレットムーン解体のために、結城にいちゃもんをつけるに決まっている。

 結城は営業課長に相応しい一般常識や礼儀を身につけているが、エリート育ちの副社長には、結城の動きががさつだから社長の資質を問われる……と警告を発したのは衣里。

 上流階級育ちには同じ場所で育った自分が相応しいと、衣里自らマナーの講師を買って出た上に、忍月系列の社長として覚えておくべき上流界の仕組みなどをレクチャーした。

 衣里自ら上流階級育ちだと告げたことは初めてのこと。

 長い定規を手にして、覚えの悪い生徒に、ここぞとばかりに身体をぺしぺしと叩く鬼教師ぶり。

 そして専務からは経営学と、忍月コーポレーションについて。結城はシークレットムーンの顧客はすべてわかっているけれど、母体会社のことはなにもわかっていなかった。

 朱羽からは、結城が持つ会社の未来のビジョンを具体的に固めるために、試算など数字的な面をサポートし、株主総会で発表することになるだろう、結城のスピーチを一緒に考えているらしい。

 なにも出来ないあたしと木島くんはお茶くみ係と、社長の看病係。

 杏奈は朱羽と作戦をたてたもの以外に、開発したものの受注や問い合わせもしているらしい。
 
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