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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon

 朱羽は内容証明を持ってきていた。

 それを見てあたしは震え上がった。

「特許権侵害としてあのプログラムソフトの販売差し止めと、2600万円の損害賠償請求ですね。裁判所に提起したそうですが、この裁判所は……向島一族が司法に携わっているところですよね」

「……ああ。わざわざそこで俺達に不利に動くつもりらしい」

「無効の抗弁をしたところで、長引きそうですね」

「ああ。かなりの金が出るぞ、この訴訟の一件で。お前らが作ったものが回収されるとなると、そこからネットで向島の時のように騒がれるかも知れねぇな。もしくは向島が積極的にリークするか。それを知った顧客の信用が失墜しなければいいが」

「……私が、私がちゃんと考えていなかったから」

 杏奈は皆の前で、泣きながら土下座をした。

「私が向島に行く「それはダメです」」

 朱羽は杏奈の肩を手でぽんと叩いて、顔をあげさせる。

「なに向こうの思う壺になるんですか。鹿沼さん、あなたも。俺達はひとりも抜けることはしてはいけない」

「だけど……っ」

「訴訟したのはこちらへの威圧行為です。三上さんのほどの実力がなく、俺達の声だけに囚われたプログラムを作るような技術者が、比較して検証など出来ない。他の機関に依頼したのだとしても、この内容証明は昨日送られている。月、火、水の3日間で、俺達が暗号化したソフトがプログラムごと丸々解析されたとは思わない。三上さん、どう思います?」

「私は……」

 皆が杏奈を向く。

「俺と三上さんが作ったプログラムレベルを、三上さんが解析するのは、どれくらいかかります?」

「……杏奈ひとりなら、二週間はたっぷり」

「でしょう。俺もそれくらいだと思います。大した検証していないと思いますよ。多分、向島専務が来たのは、その脅しが正しかったのか直接様子を見に来たのだと俺は思います。もし本気で特許権に抵触する粗を見つけたのなら、差し止めの仮処分なり、断行権があるものを平行して手続きしてくるはずだ」

「つまり、ありえそうなこちらのミスを予想で拾い上げて、はったりで訴訟起こしたと?」

 結城が問うと、朱羽は頷いた。

「ええ。事後確認だと。訴訟沙汰で忍月の副社長が喜ぶ、攻撃材料にもなりますしね」
 
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