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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 
「ご、ごめん……」

「やめてよね、そういうこと。私の同僚がこの馬鹿社長だけになんてさせないでよ」

「……おい、誰が馬鹿社長だ」

「あんたよ、結城馬鹿社長! いい、陽菜。シークレットムーンの社員は、誰一人犠牲を出さない方法を議論してるの。最初からあんたを差し出す気なんてさらさらない。あんた、自分がどれだけ皆に愛されているのか、もっと気づいて自覚しなさいよ。うちらはあんたの家族でしょうが」

「……うん」

 そうだね、あたしに血の繋がった家族はもういなくなったけれど、あたしには血が繋がらないだけの愛おしい家族がいる。

 あたしはそうやって、ムーン時代から月代社長が作った会社を、生まれ育った実家のように思ってきたんだ。

 あたしは、シークレットムーンから出たくない。

「あたし役立たずだけど、ここに居てもいい? また全力で頑張るから!」

 すると結城が笑って、あたしの額に指を丸めてでこぴんをしてきた。

「アホ鹿沼、なにが役立たずだよ。十分役に立ってるじゃねぇか。俺は……俺達は、なにがあってもお前を手放さないからな。お前いてこそのものだ。な、香月!!」

 結城の声に朱羽は笑ってそうだと頷いてくれた。

「そうだよ、鹿沼ちゃん。本当は杏奈がいかなくちゃいけない。だけど杏奈、シークレットムーンの杏奈として、最後まで戦うから。だから鹿沼ちゃんも一緒に頑張ろう? 香月ちゃんの頭脳と宮坂専務の頭脳が合体したら、向島対策、完璧だから!」

「……うん、ありがとう杏奈」

 鼻の奥が熱くなってツーンとする。

「もう、主任。俺まだまだ主任に教わることがあるっす!! 相手によってこちらの形態を柔軟に変えていくという主任のスタンス、めっちゃここで役だってるっす。主任、これ見て下さいっす」

 それは何か手で書かれた紙の山。

「議論の内容をメモったっす。主任にいつも、何度も何度も案を作らせられたから、俺、聞いたものを簡単にまとめる力ついたっす。あ、三上さんのスパルタな扱きもあるっすが」

「言われたことはメモるくらいは常識だよ、木島くん。だけどね、鹿沼ちゃん。木島くん、飛び交う言葉をわかりやすいYES・NOのフローチャートとか図案にしてくれたから、それを見て色々話が進めれたよ」

  
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