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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「あの結城さん、例の件って……」
「ねぇ、衣里あたし……」
「ぶはははは!! 鈍い奴だな、功労者は帰れ帰れ!!」
宮坂専務が笑いながら、両手であたし達の服の裾を掴むと、問答無用でドアまで引き摺った。
そんなあたし達を助ける者はなく。
「真下、本物の酒が飲みたい~」
「だから、あんたは良い格好しすぎなの!!」
無論、同期ふたりもあたし達を見ようともしない。
専務の無情さに異を唱える者がいるはずもなく、逆に呑気で明るい声が、あたし達を放り捨てようとする専務の方を後押しする。
「陽菜ちゃーん、朱羽くーん。お疲れ~」
「じゃあね、鹿沼ちゃん香月ちゃん、また明日!!」
「明日も午後のケーキ頼むっす!!」
社員全員から賛同の拍手を貰う。
いやいや、全員分幾らかかるのよ。それよりガタイがいいチクビーも助けてくれないのかい? それでも部下か!?
専務はあたし達を引き摺ったままドアを開け、ぽいと外に放った。
「イタタタ。専務……酷いじゃないですかっ」
「ははは。後のことは気にするな。ふたりきりに早くなれよ」
「ちょ、専務……」
「全員からのせめてもの礼だ。受け取れ」
「全員って……」
「ばればれなんだよ、お前ら。ふたりでお揃いのスマホケース持ちやがって。俺ですら沙紀とそんなことしねぇのに」
あたしと朱羽は顔を見合わせて、真っ赤になってぱっと顔を背けた。