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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 ヘッドライトの光と共に、朱羽の流し目があたしに注がれて、とにかくもドキドキが止らないあたしは叫ぶ。

「そ、そんな、まだ付き合いたてなのに!!」

「嫌?」

 くぅ、だからその妖しげな流し目をやめてったら。

「い、嫌なわけじゃないけど、まだまだ愛を深め「絆創膏に愛が必要?」」

「へ?」

「普通、傷跡を隠すには絆創膏じゃないか? 陽菜はなにを想像したわけ?」

「い、いや、その……」

 
 やられた!!


「もしかして、左手の薬指に欲しいものあるの?」


 だからやめて、その艶めいた目は。

 夜景と共に、あたしの方が妖しい気分になるから。 


「あなたがおねだりするのなら、いいよ? 明日でも買いにいく?」

「……っ」

「付き合った記念じゃなくて、本物の買っちゃおうか」

 ああ、なんだか変な気分になる。

「あなたが一番欲しいもの、俺におねだりして?」

 あたしが欲しいのは、そんなものより……。


「朱羽が……欲しい」

「………」

「もっとくっついて、朱羽の匂いを思い切り嗅ぎたい」

「………」


「……っ!!!!」


 しーんと静まりかえった車内で、はっと我に返ったあたし。

 今の変態発言じゃないか!!


 そんな時、ETCを通過した。

 よかった、いいところにETC様。話を壊してくれてありがとう。

 そう心の中で拝んでいた時、朱羽がぼそりと言った。

「……今高速じゃなかったら、絶対家に連れ帰ってた」

「へ?」

「先週は俺、浮かれて盛ってばかり居たから、今日は恋人らしくデートをと思ったのに、陽菜……なにを言い出すわけ? なんであなたはそこまでいやらしいんだよ!?」

「いやらしいって……うわっ!!」

 首都高湾岸線を、フェラーリはぐんぐんとスピードを上げた。
 
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