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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

「あははははは!! 凄い真っ赤!!」

 朱羽の笑い声でからかわれていたのを知る。

 くそっ。

「え、ゆかり? ひじき? 薄力粉? 餃子の皮? 納豆? チーズ?」


 くそっ!!


「たまご? 大豆? ショートニング? バター? アボガド?」

 くそくそっ!!


「林檎そんなに色々買うの?」

 色々言われながら、自棄買いのように材料を揃えた。

 餃子の皮を買いながら挽肉を買っていないのが、朱羽には不思議らしい。

「別に餃子作らないよ」

「餃子の皮と書いてあるのに、餃子じゃない? なんだろう、凄くわくわくしてきた」

 憂えて悩める姿も美しいが、単純に早く作れる材料の一部だけ。

 凄く期待されているような気がするが、早く作ることだけが取り柄のあたしの料理は、朱羽みたいに手が込んだりしていないのが難点だ。

 困ったときには、スマホがある!!

 とりあえず白米はあるとのことで、レジ袋が四袋になって、ふたりでぶら下げて車に戻り、朱羽のマンションに向かった。



 ***

 久しぶりに見る朱羽のマンションは、夜目でも高級ホテルに引けをとらないほどに豪華な外観だ。

 横を擦り抜けると、地下の駐車場らしきところに入る直前に、横にあるボックスにカード(恐らく部屋のカードキー)を差し込むと、バーが上がって通行可能になった。



 広い駐車スペースに車を停めると、朱羽はあたしの荷物を肩に提げ、レジ袋を持ってあたしを連れ、直通のエレベーターに乗る。

 エレベーターを降りると、そこはコンシェルジュがいるところだった。

 受付に立っていたのは、いつぞやの背広姿のコンシェルジュ。

 にこやかな笑みを浮かべている。


「お帰りなさいませ、香月様」

 もうひとりのコンシェルジュも一緒に頭を下げる。

 朱羽は会釈して通り抜けようとしたが、あたしの腰を引き寄せながらコンシェルジュに言った。


「このひと俺の恋人なので、来たらすぐに俺の部屋に入れて下さい」

「なっ!」

「頻繁に出入りすることになると思いますので。俺がいなくても、優先的に通して下さい」

「かしこまりました」
 
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