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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
  

「いいよ。ご希望は?」

「和食!!」

「……洋食かと思った」

「俺アメリカに行ってたから、洋風の朝食ばかりで……凄く和食に憧れてて。だけど自分で作ったら美味しくなくて……」

「何気にハードル上げられた気がする。あたしの味、普通だよ? 期待されても……」

「あなたが作るからいいんだよ。味噌汁、今と朝とは具を変えてね」
  

 朱羽の家の近くで24時間営業しているスーパーがあるらしい。
 
 首都高を下りて人気のない大型スーパーに入る。

 店内、朱羽がカゴをセットしたカートを押して、あたしが横でほいほいと荷物を入れる。

 おにぎりはたらこがいいと、散々悩んだらしい朱羽からのご希望がきた。

 美味しいものを沢山食べていそうなのに、好みは意外と素朴だ。

 朝食はお任せと言われたけれど、朱羽の冷蔵庫になにが入っているのか、朱羽自身もよくわかっていないらしい。

 とりあえず数少なくなっている食品の中から、適当なものをカゴに入れた。すると朱羽は朱羽でぽいぽいとカゴに入れていく。

「多すぎだよ。朝からそんなに食べれない……」

「今度来た時に作って? 別に今回が最後じゃないんだし」

「ま、まあ……」

「賞味期限内にうちに来ないと。いいね、こういう縛り方。生ものばかり選ぼうっと」

「白子となまこ!? あたし作れない、作ったことない……っていうかグロいのだめ!!」

 海鮮売り場、誰もいないこのコーナーの前で、慌てるあたしに朱羽は屈んでちゅっとキスをしてくる。

「朱羽!!」

「幸せで」

 愛おしくてたまらないというような、優しい目に胸が締め付けられた。
 
「あなたと、こうやって食料を選んでいるの、凄く幸せ。同じ所に帰って、同じものを作って食べると思ったら、さらに幸せ」

「……っ」

「早く食べたい。……あなたを」

「……っ!!!!」

 真顔で言われて、顔がぼんっと沸騰した。
 
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