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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 
 ぞくりとしたしたあたしが朱羽を見上げると、朱羽は髪以上に濡れた目であたしを見ていた。

 吸い込まれていきそうなその瞳――。


「……っ」


 朱羽からやるせなさそうなため息が吐かれると共に、ぎゅっと強く抱きしめられ、耳元で密やかに囁かれた。

「早く戻ってきて。このまま離したくなくなるから」

 蕩けたような顔が傾き、柔らかな唇があたしの口角に押し当てられる。

「続きは、また後で」





 速攻で髪と身体を洗い、イランイランの泡が浮く浴槽に入った。

 前回は濡れたショーツを洗っていたところに、朱羽が入って来たんだっけ。そうそう、テレビを見るとか言い出して。

 朱羽が熱を出して倒れていなければ、あたしはこのマンションに来ていなかっただろう。

 あれはひとつのきっかけだったように思う。えっちなことをしたというよりは、あれで朱羽の男を感じるようになった。

 泡風呂の中にいるあたしは、朱羽の匂いに包まれている。

 噎せ返るようなイランイランの匂い。

 強い催淫効果のあるこの香りは、朱羽の本質の匂いでもある気がする。

 目を瞑ってみた。

 朱羽に抱かれている――。

 そう思ったら身体のゾクゾクが止まらない。

 少しの手の動きで繊細な泡が、あたしの肌を滑る。

 瞼の裏に居る朱羽が、あたしを触っている。

 敏感な胸と股間に手を伸ばしている。


 蘇る記憶に、身体が切なく疼いた。

 本当に触られているような錯覚――。


「……はぁんっ、朱羽、駄目ぇっ」

 
  


「呼んだ?」


 がらっとドアが開き、朱羽本人が現われた。
 
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