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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

「ひっ!?」
 
 あまりの動揺に思わず浴槽の底で滑って転げ、アップアップしていると、


「陽菜、大丈夫か!?」


 朱羽が慌てて中に入ってきて、あたしを持ち上げると壁にあるパネルを押した。

 栓が抜かれたのか、泡の水位が低くなっていく。

 同時にまた朱羽がパネルスイッチを押すと、シャワーが真上から降り注ぎ、身体についた泡が消えていく。


「なに遊んでるんだよ」

「お、驚いて……。急に声をかけるから」

 シャワーが止まる。

「随分と色っぽい声で、『朱羽、駄目ぇっ』って言ってたけど?」

「な!!!」

 朱羽は薄く笑う。

「別に俺だって、あなたを想ってひとりでしてたんだから……」

「ち、ちちち違うわよ!! 触ってなんかないわよ!!」

「どこを?」

「どこをって胸と」

「胸と?」

「……~~っ!!!」

 憤然と浴室から出るあたしの後ろで、朱羽のクスクス声が聞こえた。

 

 着替え中だというのに、朱羽が笑ってこっちを見ているのが、洗面台の鏡でよく見える。

 くそっくそっ!!

 想像とはいえ、自慰もどきをしてしまうなんて。

 それを見られてしまったなんて。

 不覚!!


 バスローブをふたりでお揃いのを着ているのが鏡に映ると、なんとも言えない気分になってしまう。

 ドライヤーを借りて髪を乾かしている時、朱羽に真顔でじっと見つめられて、逃げ出したい気分になる。

 ここまでまっすぐで、熱情に満ちた眼差しを向けられると、抱きつきたくなってしまうから。

 どうしても鏡の中の朱羽が気になり、ちらちらと見てしまう。

 朱羽がふっと笑った。


「貸して。乾かしてあげるから」


 狭い洗面台の更衣スペースで、朱羽がドライヤーを持ってあたしの髪を手ぐしで梳かしてくれた。

 洗面台の上には、あたしの旅行用の歯ブラシセット。

 風呂に入る前に使用したものだ。


「今度、長いの持っておいで」

「え?」

「自分の家だと思って」

「……っ」
 
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