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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
  

「それと……、渉さんが俺の狂った母親を入れた病院。渉さんも知らないうちに勝手に転院されて、渉さんが行方を掴んだ時には、母は既に死んでいたそうだ」

「そんな……っ」

「ろくに食事も与えられず、最期には俺の名前を呼んでいたのだと、渉さんが金を掴ませたら医者はそう語ったらしい」

「それは、現当主の仕業?」

「義母だ。彼女は愛人に容赦ないと、渉さんからも聞いていた。渉さんの母親も彼女に殺されたらしい。渉さんの目の前で」

「目の前で殺された、の?」

 全身から血の気が引く。

 殺人を犯した人間はのうのうと生きていれるのは、財閥だからなのだろうか。財閥とは、そんなに罪を隠蔽できる場所なのだろうか。

 明朗で沙紀さんにべた惚れの宮坂専務からは、そんな過去があったように思えない。専務は本家で恵まれた生活をしていたように思えていたから。

「どんな方法で殺されたのかはわからない。渉さんが詳細を濁すから。だけど逆に言えば、俺に言えないほどの残虐な方法だったんだろう。ただ単にナイフでぐさりなどではなく。……俺の母さんだって、死因は餓死だという。この豊かな日本でっ」

 震える朱羽の手を、反対の手で包むと、その手をさらに朱羽が外側から包み込んだ。力が入っていた。

「あいつらが欲しいのは、渉さんや俺の中にある死んだ父親の血だけだ。だったらすべての血を抜き取って差し出して終わりにしたいよ!!」

「朱羽……」

 垣間見える朱羽の憤怒に、涙が出そうになる。

「渉さんも相当に苦労しているんだ。それを沙紀さんと月代社長が救った。そして俺の生きる力をくれたのは、渉さんと……あなただ」

 朱羽はあたしを胸の中に掻き入れた。
 
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