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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
裏切り者であるあたしを詰る、皆の目が怖い。
それまで穏やかだった彼らの目が変化した瞬間、あたしは……今まで思い込んでいた、彼氏であった守を始めとした同級生から、満月に変貌するあたしのことを侮蔑嘲笑された……あの、偽りの記憶が蘇った。
平穏から不穏へ、平和から混乱へ。
あたしの精神が波立った。
あたしが創り出して苛まれ続けたあの残像が、今重なって。
あたしが愛した友と、仲間と恩人の姿は、黒く澱んでいく。
大切に思っていた分、彼らから受ける悪感情はきっと大きいのだろうと思えば、浅い息をたくさん繰り返しても、胸が苦しくてたまらない。
気持ち悪い汗がびっしょりと全身の肌を伝う。
カタカタと震えるその手を、朱羽が繋いで背後に隠した。
見上げる朱羽の横顔は厳しく、あたしは本当に直感で……、彼がなにを言おうとしているのかわかった。
優しい彼は、こんな弱いあたしを、きっと安全な場に置こうとするはずだ。安全な場所、つまり今までいた輪の中にあたしひとりを置き、あたしと決別しようとしているのだと。
それを予感したように血の気が一気に引いて。
だから、彼が口にする前に、あたしは強硬的に言葉にした。
「辞めさせて下さい」
するりと彼の手を外し、その場で正座して、頭を下げた。
「こんな時になにを言うのってあたしでも思う。大好きな仲間と愛する会社があって。結城も衣里も木島くんも杏奈も他の社員も。社長も専務も沙紀さんも大好きで、本当にお世話になっているのに、戦線離脱することをどうか許して下さい」
あたしに飛んだ一斉の声。
その中には慌てた朱羽の声もあった。
それにも構わずあたしは言った。
「恩知らずのあたしを、罵倒しても呪ってもいい。だからお願いします。辞めさせて下さい……」
「陽菜、あなたがそんな思いをすることはない!」
きっと朱羽は感づいている。
あたしが抱えた満月の辛さを受け入れてくれた朱羽だから、あたしが周りからどんな目で見られることに心身共に病んでいたのか、既に気づいているはずだ。