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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
バッグを置いていたリビング室。
専務が座る前で、衣里は掠れた声を上げた。
「陽菜、これ……どういうこと?」
衣里の手にはあたしのバッグ。
そしてそこから引き抜いたのは、あたしが書いた退職願――。
「陽菜、どういうことよ!?」
衣里の悲痛な声で、結城と木島くんがやってくる。
結城が衣里から封筒を取り上げて中身を開き、あたしに険しい顔を向けてきた。
「……どういうことだ、鹿沼」
あたしに詰問してくる。
「冗談……、だよな?」
結城の声が震えた。
「俺が社長になっても、お前がいないなんて……」
朱羽と杏奈と沙紀さんが、社員ふたりを見送って、エレベーター前から戻って来た。
「鹿沼、会社辞めねぇよな!? ずっと俺達と会社守っていくよな!?」
事態を察した朱羽の顔色が変わった。
「嘘よね、陽菜!! 結城が社長になるんだよ!? 私達ずっと同期で結城を支えなきゃいけないの、あんたわかっているよね!?」
……こんな状況で言えるわけがない。
「お前、俺らだけではなく、香月残して辞める気じゃねぇよな!?」
朱羽とふたりで辞めるなんて。
最悪な形で、露見してしまうとは――。