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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「惚れた女のすべてを守れて、初めて男といえる。俺も沙紀を選んで、沙紀に俺の境遇を話した時には、それを受け入れて貰えた時には、どんなことがあっても沙紀を守ってやると心に誓った。わかるか、それが今の俺の生きる力だ」
「専務……」
「沙紀のためなら、どんな奇跡だって起こしてやる。俺達が出生を語るというのは、それくらいの覚悟が必要なんだよ、カバ。生半可の気持ちで、告白なんかしてねぇ。死んだ母親の二の舞にならないように、忍月を怖がって俺達から離れないように、必死に祈りながら話してる。お前がその……満月のことを朱羽に話す時も、かなり勇気が必要だったように」
「……はい」
「そんな俺達に、お前の過去なんかまるで痛くも痒くもねぇ。朱羽を見損なうな。あいつはありえない成長をしてブレーン的才覚を持った、まだまだ未知数の奴だ。そう変貌したのは、すべてはお前のためだ。お前が朱羽の核で、朱羽を成長させる。それはこの状況を打開出来る手札となりえる」
「はい」
「お前が朱羽のために血を流す覚悟があるのなら、朱羽に選ばれた女だと、胸を張って堂々としてろ。それが朱羽の力となる。お前の卑屈さが一番、朱羽の足を引っ張る」
「わかりました」
専務の力強い言葉は、すっとあたしの胸の中に入った。
反論も出なかった。
「それに、そんな過去があったから、お前……朱羽と出会えたんじゃねぇか。結城と出会ったことも必然。シークレットムーンに、月代さんに選ばれたことも必然。お前が月代さんの会社にいてくれたから俺は、忍月の魔の手がかかりそうな朱羽を、堂々とお前に引き合わせることが出来たんだ」
「………」
「ものは考えようだ。すべては意味があって繋がっている。お前がシークレットムーンにいなかったら、俺はOSHIZUKIビルにお前の居る会社を引き寄せることが出来なかったかもしれない。俺か朱羽が今頃死人のような面して忍月財閥を継いでいたかもしれねぇ。今のような……少しでも自由があり、俺が沙紀と一緒に居れて、朱羽とお前が恋人になり、朱羽に仲間が出来る……そんな環境があったのは、突き詰めれば……お前にそういう過去があったおかげだ」
あたしはくすりと笑ってしまった。
過去は消せない。消せないけど、意味があって今ここにあると考えれば、あたしの唾棄すべき過去も、いくらかは可愛く思えた。